ビスホスホネート(BP)製剤と抗RANKL抗体製剤が惹起する薬剤関連顎骨壊死(それぞれBRONJとDRONJ)の確定的な病因は不明で決定的な治療方法は存在しないが,リンパ管形成の点から,BRONJとDRONJの免疫病理学的所見が異なることを突き止めた.一方近年,炎症創部における骨髄由来CD11b+F4/80+LYVE-1+マクロファージのリンパ管内皮細胞への分化転換が報告された.そこで研究代表者は,口腔創部に動員される骨髄由来マクロファージの減少とリンパ管内皮細胞への分化転換阻害に起因して,BRONJとDRONJの発症機構は異なると仮説を立てた.本研究の目的は,開発した抜歯誘発性高頻度発現型BRONJ/DRONJモデルを実験ツールとして使用し,マクロファージの分化転換を基軸とした薬剤関連顎骨壊死の発症機構を解明することにある.前年度に行ったクロドロネートリポソームシステムを応用したマクロファージの全身的枯渇実験から,BRONJ様病変は著しい悪化が惹起されており,また,リンパ管新生が有意に抑制され,M2マクロファージが有意に減少していたことから,M2マクロファージが鍵であると考え,M2マクロファージをBRONJ様モデルマウスに移植することを考案した.その結果,培養したM2マクロファージを移植により,BRONJ様病変は治癒・寛解することを突き止め,さらに病態解析を行うと,治癒・寛解が認められたBRONJ様病変部位では,リンパ管新生が有意に増加し,さらにM2マクロファージの分布も有意に増大することが明らかとなった.
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