歯科インプラント治療は口腔内における歯や歯列欠損の回復に有効な治療選択肢のひとつだが,生物学的併発症としてインプラント周囲炎が挙げられる.インプラント周囲炎は確立された治療法がない難治性の硬軟組織疾患であり,常に一定の患者数が存在していることに加え,高齢化率の上昇などからも,今後のインプラント周囲炎患者数は増加の一途をたどると予想される.しかしながら,インプラント周囲炎は臨床経験型の領域で,病態形成機構は不明のままである.一方近年,オートファジーに関する研究が注目されており,免疫応答の要であるマクロファージや骨関連細胞に重要な役割を果たすことが証明されている.オートファジーが炎症や細菌感染に深く関与することも報告されており,インプラント周囲炎との関連性が強く予想される.そこで本研究の目的は,インプラント周囲炎モデルを研究ツールとして用い,オートファジーを基軸としたインプラント周囲炎の発症機構を解明することにある. 本研究期間全体を通して,LPSの免疫化を応用したLPS誘発型インプラント周囲炎様病変モデルラットを作製し,マクロファージに着目して,詳細な組織形態学的,免疫組織化学的,組織病理学的解析を行った.その結果,LPS投与群(インプラント周囲炎群)では,全てのマクロファージを示すCD68陽性細胞が有意に増大し,その内訳は,CD38陽性M1マクロファージが有意に多く,CD163陽性M2マクロファージ数には変化が認められなかったことから,M1/M2比は,M1へと大きくシフトしていることが明らかとなった.さらに骨髄内の骨表面に存在する骨性マクロファージ(Osteal macrophage)がLPS投与群で有意に増大することを突き止めた.オートファジーについては現在最後の解析を行っているところである.
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