研究課題/領域番号 |
20K18609
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研究機関 | 九州歯科大学 |
研究代表者 |
宗政 翔 九州歯科大学, 歯学部, 助教 (40852489)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 口腔乾燥症 / 糖尿病 / VEGF / 炎症 / 唾液腺 / 唾液 |
研究実績の概要 |
糖尿病患者では、しばしば口腔乾燥症が合併し唾液分泌量の低下によるインプラント周囲炎や歯周病の増悪、義歯の装着困難などが歯科補綴治療に際し問題となる。そのため、糖尿病における口腔乾燥症の病態解明および治療法の確立が急がれている。先行研究では、2型糖尿病モデルマウスKK-Ayで唾液分泌量が有意に減少しており、その一因が腺房細胞内Ca2+濃度上昇の抑制であることが明らかになっているが、高血糖による慢性炎症の影響については未だ不明である。一方で、唾液分泌能の低下が危惧される糖尿病患者において、炎症性メディエータである血管内皮増殖因子(vascular endothelial growth factor: VEGF)が唾液腺や唾液中濃度で上昇しているとの報告があることから、VEGFをターゲットとした唾液腺の炎症コントロールにより唾液機能の回復が図れると考える。そこで本研究では、抗VEGF抗体の唾液腺への応用が唾液分泌機能の回復に有効か評価することで、抗VEGF抗体が口腔乾燥症の新規治療薬となりうるかをKK-Ayマウスを用いて評価する。 これまでにex vivo顎下腺灌流実験を行い、唾液分泌量の測定および分泌唾液中のイオン濃度などを測定している。その結果、抗VEGF抗体ラニビズマブ10 μg/kgを腹腔内投与した群では、有意に唾液分泌量が増加することが明らかとなった。一方で、分泌唾液中のイオン濃度などに変化はなかった。 今後は抗VEGF抗体の投与により唾液分泌量が増加するメカニズムについて解明していく予定としている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
COVID-19の感染拡大による研究の中断があり、実験の進捗状況が当初よりやや遅れている。当初の計画では、Ca2+イメージングまで完了する予定であったが、唾液腺ex vivo灌流実験による唾液分泌量および分泌唾液中イオン濃度、pHの測定にとどまっている。
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今後の研究の推進方策 |
回収した唾液サンプルを解析し、分泌唾液中のVEGFおよびタンパク質濃度を測定する。さらに、回収した唾液腺を用いてqPCRを行い、炎症性サイトカインの測定や組織学的解析を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
該年度では、COVID-19の感染拡大のため研究中断期間があり、予算計上した消耗品の購入を一部見送った。それに伴い、研究成果が当初の予定よりも得られな かったため、学会発表を見送っており、それらの経費を繰り越すこととした。今後、各種試薬等の消耗品や実験動物および学会での研究報告に使用予定である。
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