本研究は,歯科インプラント補綴治療を受けた患者を対象に,CT画像解析によりインプラント周囲骨の経時的形態変化を実測,さらに咬合等の補綴学的要件や患者の全身状態を評価項目として,骨吸収を含めた骨移植部の形態変化に影響を及ぼす様々な因子の検証を行った. 被験者は東北大学病院歯科インプラントセンターにて骨造成を行った後にインプラント補綴治療の完了した20歳以上の男女とし,研究参加の同意を文書で得られた者を対象とした.最終年度において15名の被験者の25本のインプラントに対して上記の解析が完了した.各被験者のCTデータを画像処理ソフトウェアScan IPにてセグメンテーション後に3次元構築し,骨の外形状およびインプラント頬側部の3次元的骨量の経年的変化を解析した.また、各被験者のCTデータを用い3次元モデルを作成,有限要素モデルを構築し,インプラント周囲骨内応力・歪みを算出した.有限要素解析ソフトウェアはAbaqusを使用し,連携協力機関のシドニー大学(オーストラリア)の研究協力者と解析を実施した.結果として,多くのインプラントについては補綴後最初の1年において骨変化が大きく,1年後から2年後にかけての変化は小さいことが見出された.また,インプラント頬側骨量の変化においては,骨内応力・歪みとの有意な相関は認められなかった.しかしながら,補綴直後の頬側骨の厚みがその後の骨変化に影響を及ぼし得ることが明らかになり,インプラント補綴を長期にわたり良好に維持するためには,インプラント周囲骨量や形態が重要であることが示された.
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