研究実績の概要 |
認知症の対策は、人間の尊厳を守り、自立した生活を営むための喫緊の課題である。しかしながら、認知症に対する根本的な治療法は確立されていないため、認知症を発症させないように、高次脳機能を維持し、その低下を予防することが重要である。 近年、口腔因子と高次脳機能の関連について、様々な結果が報告されているが、多人数を対象とした長期縦断研究はない。そこで本研究においては、自立した生活を送っている高齢者を対象として9年間の縦断研究を行い、口腔因子と高次脳機能ならびにその機能領域別の影響について、明らかにすることを目的とした。 2020年度は、COVID-19の蔓延の影響により、予定していた80歳群に対する会場調査は次年度に延期となったが、これまで調査に参加したすべての者を対象に郵送調査を行い、現時点で1786名の回答が得られている。研究実績としては、これまで収集した口腔検査データから、咀嚼機能が、認知機能に及ぼす影響について検討を行った。対象者は、残存歯数と咀嚼スコアによって以下の4群に分類した(20歯以上(20歯以上群),20歯未満咀嚼能率スコア0~2(低下群),3~5(ふつう群),6~9(良好群))。目的変数をMoCA-J得点とした一般化線形モデルにて検討を行った結果、 20歯以上群を基準とした場合、低下群(非標準化係; B=-0.58、p=0.02)は認知機能に有意な関連を認めたが、ふつう群 (B=-0.38, p=0.159)、良好群(B=-0.068, p=0.851)は認知機能に有意な関連を認めなかった。
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