研究実績の概要 |
本研究は、国立循環器病研究センター予防健診部による循環器コホート調査である「吹田研究」を母体として進めている。令和2年度は、新型コロナウイルス拡大の影響に伴い、歯科健診を実施することができず、歯科検診者数は0名であった。これまで蓄積したデータベースの合計は、ベースラインデータが2,339名、再評価データが1,473名となった。これらの一部を用いて以下の解析を行った。 メタボリックシンドローム罹患のリスク因子の一つである咀嚼能力低下に着目し、咀嚼能力と唾液中ストレスマーカーとの関連について分析を行った。対象者は、平成20年6月から平成24年3月までのベースライン時歯科健診に参加した880名とし、ストレスマーカーとしては、唾液中のIL-6およびコルチゾールを測定した。その結果、唾液中IL-6濃度が高い者は低い者と比べて、咀嚼能力が低いことが明らかになった。本研究より、咀嚼能力が低い者は、慢性的なストレス状態にある可能性が示唆された。 その他に、歯周病の悪化と咀嚼能力低下との関連について検討を行った。対象者は、平成20年6月から平成26年6月までのベースライン時、ならびに平成25年6月から平成30年7月までの再評価時のいずれにも参加した663名とし、歯周状態と咀嚼能力を評価した。その結果、追跡期間中に歯周状態が悪化した者は、咀嚼能力が大きく低下することが明らかになった。本研究より、歯周状態の悪化が、咀嚼能力低下に影響を及ぼす可能性が示唆された。
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