研究実績の概要 |
認知症高齢者の数は2012年の時点で全国に約462万人と推計されており、2025年には700万人に達すると予想されている。また、これに認知症の前段階である軽度認知障害(MCI)を加えると、その数は約1,300万人となる。MCIを放置すると認知機能低下が続き、5年間で約50%の人が認知症に移行する危険性があるとされているが、一方で、約24%の人は健常な状態へと回復する可能性があることも報告されている。認知症高齢者における医学的、経済的負担の増大を抑制するためにも、口腔の観点から認知症の発症を予防することは極めて重要である。 本研究課題では、口腔機能の低下と認知機能の低下との関連を「栄養」の観点から分析し、口腔機能の向上により認知機能の改善が可能かどうかを検討することを目的とした。 2020年には疫学調査を行い、地域在住高齢者の口腔機能実態調査を行い、口腔機能が身体的フレイルと関連していることを明らかにした。 2021年度においては、新型コロナ感染拡大予防のために外出ができない状況であっても口腔機能向上トレーニングが行えるように、対面を必要としない口腔機能トレーニングアプリケーションのソフトの開発を行った。また、地域在住高齢者のうち、口腔機能の低下がみられる者を対象にアプリケーションの実証検証を行う介入研究を実施した。 2022年度は、口腔機能と栄養に関する知見を広めるべく、最新の論文検索を行い、レビューを作成した。さらには、前年度の介入研究の分析を行い、口腔機能(舌圧)には、動物性たんぱく質の摂取量が関連していることを明らかにした。
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