本研究では骨のリモデリングに関与している分子であるTRAF1がインプラント埋入時の周囲骨における生理学的機能を明らかにし、さらに同分子を応用し早期にオッセオインテグレーションを得ることができるインプラント体の開発を目的とした。 これまでの研究でTRAF1の破骨細胞における重要な働きを発見し、TARF1が破骨細胞の分化を細胞内で負に制御していることを見いだした。さらにTRAF1由来ペプチドを作製し、同ペプチドが破骨細胞の分化を負に制御するだけでなく細胞毒性が低いことを確認した。また、インプラント埋入によるメカニカルストレスが周囲骨の破骨細胞、骨芽細胞における骨代謝に関与する分子の発現量を変化させること、さらに、インプラント体にそれらの分子に応答する分子をコーティングし埋入することでインプラント埋入時の周囲骨における骨芽細胞、破骨細胞の分化を制御することを確認した。また、予備実験として、骨芽細胞様細胞であるMC3T3-E1細胞および破骨細胞前駆細胞様細胞であるRAW264.7細胞にメカニカルストレスを負荷し、メカニカルストレスが両細胞の分化と骨吸収関連遺伝子の発現に与える影響について解析した。 今後はメカニカルストレス負荷下でTRAF1由来ペプチドの添加が培養破骨細胞に与える影響、チタン板におけるTRAF1由来ペプチドコーティングの有無が破骨細胞に与える影響、さらに、TRAF1由来ペプチドコーティングインプラントがインプラント周囲骨の骨吸収に与える影響、などの解析が必要と考える。
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