研究課題/領域番号 |
20K18644
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研究機関 | 昭和大学 |
研究代表者 |
三好 敬太 昭和大学, 歯学部, 兼任講師 (30845128)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 光学印象 / 精度 / インプラント / 口腔内スキャナー / 補助デバイス |
研究実績の概要 |
今日,情報工学の発展に伴い,クラウン・ブリッジやインプラント上部構造などの補綴装置の製作方法は,印象材,石膏模型および歯科用合金に立脚した間接法から,口腔内スキャナーによるデジタル印象およびジルコニア等のセラミック材料を用いたフルデジタルワークフローに取って代わりつつある.それにより,従来法を基盤とした煩雑な製作過程が合理化されただけではなく,口腔内スキャナーを用いたデジタル印象法で口腔内を直接スキャンして三次元形態データを取得することにより,理論上は印象材の重合収縮,模型材に用いられる石膏の硬化膨張などの材料特有の寸法変化や,三次元形態の転写を繰り返すことに起因する寸法精度の低下などが解消される.一方で,口腔内スキャナーの特性に起因して,印象範囲が大きくなるにつれて精度が低下することが報告されており,現状では 広範囲にわたる補綴装置においては従来法が推奨されている.そこで本研究では,口腔内スキャナーを用いたデジタル印象法の全顎スキャンにおける精度を担保するために,デジタル印象法の精度を向上させる補助デバイスを開発し、そのデバイスを用いた最適なスキャン手法を確立することを目的とする.精度の低下は,デジタル印象は多数の小さな画像をつなぎ合わせて口腔内の形態データを構築するため,印象採得の範囲が広くなるにつれて誤差の蓄積が大きくなることに起因するからであり,特に欠損部顎堤を有する歯列では,顎堤の形態がフラットであるため,画像のつなぎ合わせに起因する誤差が蓄積しやすいと考えられる. しかしながら,小型のスキャナーを口腔内に挿入して撮影するという口腔内スキャナーの原理を鑑みれば,機器やソフトウェアの改良のみでは,飛躍的な精度の向上は困難である可能性が高い.本研究の学術的な「問い」は,口腔内スキャナーによる全顎ないしは広範囲の印象の精度を飛躍的に改善する方法論を探索することである.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
無歯顎ケースにおけるインプラント治療において、光学(デジタル)印象の精度・真度を向上させるために補助デバイスを開発し検証を行った。無歯顎患者にインプラント4本埋入を想定した模型を製作した。補助デバイスを何種類かCAD上でデザインし、レジンディスクから削り出しを行った。その中から適した補助装置を検証し、最適な形態を検証した。また、その補助デバイスをインプラント間に装着し数種類の機種で光学印象を行った。それに対し、従来法(シリコン印象)を行った。従来法と比較し、補助デバイスを介することで精度向上が可能か検証を行った。その結果、補助デバイスを介すると精度が向上することが示された。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究課題としては真度の検証を行う予定である。現在までは精度の検証のみで真度は検証していない。しかし臨床では精度と真度の両方が必要である。真度を検証するにはゴールドスタンダードとして用いるデータが必要であるため、精度の高い非接触式スキャナーで基準模型をスキャンしゴールドスタンダードとなるリファレンスデータを作成する。次に精度検証と同様に補助デバイスの有無をそれぞれ口腔内スキャナー3機種でスキャンしSTLデータを得る。従来法はシリコン印象で印象採得したものを石膏模型にしスキャンしSTLデータを得る。すべてのSTLデータとゴールドスタンダードのデータを重ね合わせ、ベストフィットだけではなく、スキャンボディ間の距離と角度を計測し真度の検証を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
補助デバイスの精度検証を行ったが、臨床応用するには精度と真度の両方が担保されている必要がある。また、臨床応用にあたって補助デバイスの形態や他の口腔内スキャナーで真度をさらに検証もする必要がある.そのため,補助デバイスを製作するためのディスクや,口腔内スキャナーを購入し研究計画を遂行するため次年度に使用額が生じた。
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