研究課題/領域番号 |
20K18645
|
研究機関 | 昭和大学 |
研究代表者 |
三田 稔 昭和大学, 歯学部, 助教 (10817612)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | 口腔内スキャナー |
研究実績の概要 |
近年,人工知能(Artificial Intelligence)の目覚ましい進化とともに,人間が行う学習能力と同様の機能をコンピュータで実現する機械学習(Machine Learning)の医療への応用が試みられている.本研究は,機械学習を基盤とした補綴歯科治療の診断システム確立のための端緒として,口腔内スキャナーで得られた患者のデジタル歯列データおよび臨床情報を用いて,機械学習により歯の欠損を客観的定量データとして分析し,オーラルフレイルの予測モデルを構築することを目的としている.すでに模型を用いた予備研究でのデータ分析によって本研究の方法論の部分はおおむね問題なく遂行可能であることを確認している.また現在,研究対象となる歯列を有する被検者を募り,光学印象の採得,咬合力測定,グミゼリーを用いた咀嚼検査等のデータ収集を行っている.新型コロナウイルス感染拡大の影響により,予定より若干の遅滞が生じているものの,おおむね予定通りのデータ収集を達成している.すでにデータ集積していた口腔関連QoLと補綴装置の種類に関する分析について学会発表を行った.さらに,口腔内スキャナーによる真度と確度についての評価方法について,既存の文献をまとめる形で論文を執筆しすでに投稿中である.これは口腔内スキャナーで採得したデータによるスキャナーの精度検証そのものの方法論について考察しており,本研究のみならず口腔内スキャナーを用いた研究一般に影響のある内容を分析したものである.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
両側臼歯部の咬合支持域(固定性補綴装置・暫間補綴装置を含む)を有する100名の部分欠損患者および100名の対照を目標に被験者を募る.インフォームドコンセントを取得した上で,口腔内スキャナー(Trios3, 3shape)を用いて,上下顎歯列の光学印象を行い,STLデータを集積し咬合接触面積の測定を行う.さらに,過去の治療歴・歯列の状態についてRetrospectiveな調査を行う.現在の歯列の状態に対して,補綴的に対する介入の必要性について複数名の歯科医師で評価を行う.
|
今後の研究の推進方策 |
引き続き被験者の募集を行い,患者・対照各100名を目指し臨床情報を取得していく.また,研究初期から参加している被験者については経時的な口腔機能検査,アンケートによる口腔関連QoL評価を縦断的に行う.また,機械学習によるモデル構築を開始する.機械学習アルゴリズムに関してはKim, et al.(Bone. 2018)等の報告を参照し,多変量ロジスティック回帰モデル,決定木モデル(樹木モデル),人工ニューラルネットワーク,クラスタリング(教師なし学習),ランダムフォレストの実行を予定している.機械学習モデルの出力を比較し,ROC曲線の面積で評価を行う.さらに,患者の歯列データをインプットした際のアウトプットについても評価を行なっていく予定である.
|
次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染拡大の影響により,一部研究計画の後ろ倒しが生じ,そのため予定していた出費が次年度に繰り越しになった.昨年度は咬合力測定器(オクルーザー)やアンケート入力のための端末の準備に研究費を使用した.次年度以降の使用計画としては,随時必要機器,物品の購入や学会が開催可能となった場合はその旅費,また論文執筆を継続していくため校正費用,投稿費用等に使用予定である.また光学印象に使用する器材についても追加購入が必要となる可能性が高いため適宜こちらにも使用予定である.
|