研究課題
2020年度は、口腔機能と栄養に関する各々の指標の関連性を検証することを目的として、都市部高齢者への健康調査事業、および地域歯科医院に来院する患者への口腔・栄養状態に関するデータ収集を行った。さらに、以下に示すこれまで得られているデータの統合による検討を行った。1)口腔機能および栄養の低下がフレイルに及ぼす影響都市部高齢者での健康調査事業のうち、2016年・2018年両年とも受診した65歳以上男女508名を対象に、口腔機能および栄養の低下がフレイルの発生要因となるかを明らかにすることを目的に、関連性の検証を行った。その結果、フレイルの発生には口腔機能、栄養が影響していることが明らかとなり、口腔機能と栄養双方の低下は2年後のフレイルの発生リスクを3.1倍増加させることが明らかになった。2)年齢による口腔機能低下の実態の把握2018年に都市部および農村部で実施した健康調査事業の参加者のうち、65~85歳の合計1364名を対象に、性別・年齢による口腔機能をパーセンタイル曲線として描出することで,その変化を可視化することを目的とした。男女ごとに65歳から85歳までの1歳ごとの年齢階級での20・40・50・60・80パーセンタイル値を算出したところ、50パーセンタイル値(中央値)、が調査年齢階級中で日本老年歯科学会が提唱とする口腔機能低下症の基準値未満となる項目は現在歯数のほかは舌圧,ODK/ta/など筋力が機能発現の主となる指標に顕著であり、特に後期高齢者以降に低下する傾向がみられた。また、パーセンタイル曲線は口腔の状態・機能と年齢との傾向を可視化でき,個人の値や集団の傾向を重ね合わせることで,個人や地域レベルでの口腔機能評価・管理に有用である可能性が示された。
2: おおむね順調に進展している
2020年度はCOVID-19の影響により、例年行われていた健康調査事業の一部を中止・延期せざるを得ない状況となり、当初想定していた予備調査で得られるデータについては総予定数よりも対象者数が減少した。しかし、既存のデータとの連結・統合により当初予定していた検討内容を進めることが可能となった。また、学術大会等でこれらの検討結果を発表することができ、現在論文化を進めているところである。
2021年度は、これまでの健康調査事業の継続による縦断的なデータの取得およびこれまでに得られたデータとの統合・ならびに解析を行う。また、得られた結果をもとに口腔機能・栄養管理についての簡易評価方法、および指導教材の試作版を作成する。COVID-19の影響により対象者を集めての調査が困難な場合は、個別での調査などを検討する予定である。また、2021年4月より研究代表者の所属機関に口腔機能検査および管理の専門外来が開設されたため、外来における診療情報を活用することとも検討しており、研究プロトコルを修正する予定である。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (4件)
Archives of Gerontology and Geriatrics
巻: 95 ページ: 104412~104412
10.1016/j.archger.2021.104412
Journal of Dental Sciences
巻: 16 ページ: 380~388
10.1016/j.jds.2020.08.010