研究課題
2021年度は、地域歯科医院来院患者に対する縦断的調査および口腔機能・栄養双方の評価法の検討、ならびに地域在住高齢者における口腔機能低下の特性の検討を行った。1)地域歯科医院における補綴歯科治療が必要な患者の口腔機能・栄養状態に関する検討地域歯科医院来院患者において、特に義歯による補綴歯科治療を必要とするような歯の欠損を有する患者については、口腔機能低下症の該当率が86.1%と、地域在住高齢者と比較しても著しく高いことが判明した。また、口腔機能低下症に該当した患者に対して補綴歯科治療を実施し、口腔機能を治療後に検査した結果、口腔機能低下症が改善したものは解析対象者の30.5%であった。改善群・非改善群とも咀嚼機能は改善しており義歯による補綴歯科治療の効果は十分であるものの、ベースライン時点で改善群と非改善群に差がみられた項目は現在歯数のみであり、歯数の多寡が口腔機能の改善に何らかの影響を与えている可能性が示唆された。2)地域在住高齢者における口腔機能低下の該当内容における対象者属性の検討地域在住高齢者において口腔機能低下症に該当する者を該当項目別に分析した結果、咀嚼機能および咬合力のいずれかが維持されている場合と比較し、そうでない場合の口腔機能の低下状況が異なり、現在歯数の本数に大きく依存している可能性が示唆された。以上の結果およびこれまでの解析結果を踏まえ、口腔機能の低下については年齢による因子と現在歯数の状況による因子に大別される可能性が考えられ、これらに応じた口腔機能の低下状況にあわせた対応が必要となる可能性が考えられた。
2: おおむね順調に進展している
COVID-19状況下であり、調査事業自体の制限ならびに対象者数の減少などが懸念されたが、地域歯科医院ベース、二次医療機関ベース、地域在住高齢者ベースなど、複数の環境における継続的な調査を実施することが可能となっており、特に地域歯科医院来院患者等でより臨床実感に近い研究の進捗が可能となっている。すでに地域歯科医院来院患者に対する横断データについては誌上発表を行っており、研究成果の公表も実施できている。
これまでの調査及び解析の結果、現在歯数の状況および口腔機能の低下状況にあわせた対応が必要となる可能性が示唆され、機能低下の状況に応じた口腔機能低下の類型化、また類型に応じた口腔機能・栄養管理が必要であることが考えられる。残り期間は1年であることから類型化のプロトタイプを検討し、申請者が所属する外来などの実践例等も踏まえて類型ごとの管理例を検討する予定である。また、これまで蓄積された縦断データの結果を誌上発表することを検討する。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (5件)
Journal of Dental Sciences
巻: 17 ページ: 500~506
10.1016/j.jds.2021.07.022
International Journal of Oral-Medical Sciences
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10.5466/ijoms.20.265
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