研究課題/領域番号 |
20K18650
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研究機関 | 朝日大学 |
研究代表者 |
太田 恵未 朝日大学, 歯学部, 助教 (00811043)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 高解像度マノメトリー / 嚥下動態 / 口腔リハビリテーション / 咬合 |
研究実績の概要 |
義歯装着が嚥下時に果たす役割を明確に示すことは、嚥下障害患者において歯科的アプローチの適応や治療方針を決定する際の基本的な指針となる。嚥下のための義歯の役割を模索し、臨床的知見を定量的に得ること、さらに嚥下機能を最適化できる義歯設計に本研究結果を役立てることを目的とし、本年度は健常高齢者を対象に、嚥下内圧計測装置である高解像度マノメトリー(High-resolution manometry;HRM)を用い、義歯装着あるいは非装着の状態が咽頭の嚥下動態に与える影響を定量的に評価、解析を行うこととした。しかし、COVID-19の感染蔓延と、また被験者の確保が困難なことを考慮し、既存のデータである、Eichner分類B群で義歯装着と非装着の比較や解析を行い研究を実施した。 Eichner分類B群で義歯を使用している5人(平均年齢68.4±5.4歳、 BMI:25.2±3.8)を対象に義歯装着と非装着の比較や解析を行った。 解析項目としては、軟口蓋・舌根部・下咽頭部の最大内圧と圧持続時間、上中下咽頭部、上中咽頭部、中下咽頭部の指定した範囲の積分値(圧力×距離×時間)を咽頭の収縮力とするCI(Contractile Integral)とした。義歯装着は未装着と比べ、下咽頭部の最大内圧が高くなり、軟口蓋部・舌根部・下咽頭部の圧持続時間が有意に延長した。CIでは、中下咽頭部で義歯装着群は天然歯列群より有意に高かった。 義歯の装着は、嚥下時の咽頭内圧や圧持続時間、CIに影響を及ぼすことが示唆された。高齢者の咬合喪失に対し、義歯を装着することで咽頭機能を高める可能性が示唆された。今回、HRMを用い義歯の装着よる咽頭の変化を定量的に評価することができた。咬合の喪失や咽頭機能の低下を有した高齢者に対し、嚥下機能を改善するために義歯を使用することは有効であると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度はEichner分類による咬合状態の違いや義歯装着あるいは非装着の状態の比較や解析を計画していたが、COVID-19の感染蔓延が収束しない影響を受けて、また被験者の確保が困難なことを考慮し研究計画を一部変更し検討を行った。研究実施計画ではClass C群で義歯を装着した状態と義歯を外した状態とを比較解析する予定であったが、Eichner分類B群で義歯装着と非装着の比較や解析を行い研究を実施することとした。第26日・第27回合同の日本摂食嚥下リハビリテーション学会学術大会および 第2回 世界嚥下サミットで上記内容を成果発表しており、研究の目的である義歯装着、非装着の状態が咽頭の嚥下動態に与える影響を評価する方法を検討し十分な知見を得ることができたと考える。
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今後の研究の推進方策 |
咬合状態の違いによる嚥下動態の評価を行うために、Class A~C群のデータの比較分析を行う必要があるが、COVID-19の感染症の状況により、現在のデータで確認できることを優先し研究結果を総括し、結果報告・論文執筆を行っていく予定としている。
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