研究課題/領域番号 |
20K18654
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研究機関 | 福岡歯科大学 |
研究代表者 |
梅崎 陽二朗 福岡歯科大学, 口腔歯学部, 准教授 (20778336)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 脳機能画像 / 咬合異常感 / 口腔内感覚の鋭敏さ |
研究実績の概要 |
認知機能と、口腔内感覚の鋭敏さに、どのような関連があるのかを解明する本研究において、今年度は「Phantom bite syndrome (PBS)」の患者に関する脳機能画像的研究を報告した。 義歯の調整を繰り返したり、歯科矯正やインプラント治療後に「咬み合わせがいつまでも合わない」違和感が続くPBSの患者では、一般よりも口腔内感覚が鋭敏になっていることが予想される。今回、我々は、歯の違和感がある部位に応じて脳活動パターンに微妙な乱れが生じていることを初めて明らかにした。PBS患者の脳機能画像研究は今までにほとんどなく、我々が以前報告した論文でも、PBS患者と一般健常者での有意差がみられていなかった。今回は、PBS患者で、症状の部位に注目して脳機能画像所見とともに解析したところ、頭頂葉と視床における血流左右差を見出した。例えば、右側の歯に症状のある患者では、右側の頭頂葉と左側の視床で脳活動が上昇するアンバランスが生じており、左側の歯に症状のある患者ではその逆に、左側の頭頂葉と右側の視床で脳活動が上昇するようなアンバランスが生じていることが示された。 「いつまでも歯の咬み合わせが合わない」のは、歯科処置の巧拙や歯の形そのものの問題だけでもなく、「気にしすぎ」、「神経質」というわけでもなく、患者の中枢(脳)において微妙な「咬み合わせの感覚の機能異常」が生じている可能性が示された。 この研究成果は、不毛な歯科治療の繰り返しやdental shoppingに陥った患者だけでなく、また、その対応に難渋している歯科医療従事者に、問題の解決の糸口を与えるとともに、本症の病態解明の進展につながることが期待される。 本研究内容は、本学と東京医科歯科大学でプレスリリースを行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
PBS患者での脳機能画像的所見については一定の成果が得られた。今後は認知機能の評価や加齢による変化等を検討していく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
今回発表した内容と同様のデータ集積、解析を行う予定だが、認知機能の評価も充実する必要がある。さらに、Oral Stereognostic Ability (OSA)を用いた評価を組み合わせることで、口腔内感覚の鋭敏さについても同時に評価、解析可能になると思われる。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症の影響で、海外での学会発表が中止となり、旅費が余りがちとなあた。国際学会が再開されれば、積極的に参加したい。
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