研究課題
具体的な研究の土台として、口腔内感覚の変容した患者の実態を明らかにするために、口腔異常感症の症例報告を行った。本症は、抗うつ薬や抗精神病薬を含むいくつかの治療が有効であると報告されているが、本症状は依然として難治性である。症例は、57歳の女性で、切歯が「フニャフニャする」と訴えており、不快な症状のために家事も困難であった。以前から数例の改善報告のある、アリピプラゾールでは改善せず、ミルタザピンとブレクスピプラゾールの併用で改善が得られた。口腔不快感のVASスコアは90点から61点に減少し、家事をこなせるほどに改善した。結論として、ブレクスピプラゾールとミルタザピンの併用は、口腔セネストパチーに対する新たな治療選択肢となりうることが示された。本症例報告は、Clinical Neuropharmacology誌で発表された。次に、口腔内の異常感覚が薬剤性に引き起こされた症例を報告した。患者は74歳の女性で、開咬と顎の痛みであった。患者はうつ病の既往歴があり、オランザピンなどの薬物治療を受けていた。顎関節ジストニアと診断し、精神科医と連携のうえオランザピンを中止したところ、開咬と顎痛は消失した。抗精神病薬を服用している患者が開咬を訴えた場合、歯科医はジストニアを考慮すべきであることを指摘した。本症例報告は、Oral Science International誌で発表された。こうした症例を踏まえ、脳血流SPECT検査を用いて、口腔異常感症の患者7例の脳血流を測定した。ガム咀嚼や飲水で改善感が得られる症例のみに限定し、症状が強い状態と、改善感が得られている状態の、2回で血流の差が見られた脳領域を特定した。結果として、楔前部や側頭葉における脳血流の変化がみられていた。口腔内の違和感と、脳血流の関連をさらに示すことができた。
すべて 2023
すべて 雑誌論文 (2件) 学会発表 (2件)
Clinical Neuropharmacology
巻: 46 ページ: 123~125
10.1097/WNF.0000000000000545
Oral Science International
巻: accepted ページ: accepted