研究課題/領域番号 |
20K18659
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
渡邊 毅 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(医学域), 助教 (80815217)
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研究期間 (年度) |
2021-03-01 – 2024-03-31
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キーワード | ノセボ効果 / プラセボ効果 / 期待感 / 不安感 / 歯科医療 |
研究実績の概要 |
抜歯後疼痛に対する鎮痛薬のランダム化比較試験における鎮痛薬群とプラセボ群の副作用を50の試験のメタ分析により比較した。少なくとも1つ以上の副作用を訴えた患者の割合、および脱落者の割合は鎮痛薬群とプラセボ群において変わらなかった。この結果は、鎮痛薬群における副作用は薬理作用によるものではなく、その多くはノセボ反応であったことを示唆している。我々が知る限り、本研究は歯科領域においてノセボ現象の存在を示した最初の研究である。本研究内容を国際疼痛学会で発表し、国際誌に発表した(Watanabe et al., J.Oral Rehabilitation. 2023)。
ここまで、歯科領域における鎮痛薬の投薬治療のノセボ現象に注目して研究を行ってきたが、歯科領域において、う蝕治療や抜歯、矯正治療など痛みを伴う治療は多く、これら歯科治療における痛みの感じ方においてもノセボ現象が影響を与えることは十分に考えられる。本研究では電気歯髄診における疼痛におけるノセボ現象に注目した実験系を準備している。
研究代表者が所属している徳島大学大学院医歯薬学研究部予防医学分野では、日本多施設共同コーホート研究(J-MICC Study)に参加し、生活習慣病の疫学研究に取り組んでいる。研究代表者もコーヒー摂取と代謝表現型の関連に注目した研究を行った。J-MICC Studyの参加者のうち、代謝表現型の診断および、生活習慣のデータなどに欠損のない26363人を対象に解析を行った。その結果、コーヒー摂取は、肥満の有無にかかわらず、代謝的に不健康な表現型と有意な負の関連があることが見出された。この結果を国際誌に発表した。論文作成の過程で、本研究にも応用できそうな疫学的手法を学ぶことが出来た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
査読期間は1年程度と長かったが、無事にメタ分析を出版することができた。また、国際疼痛学会において発表したことで、研究結果について世界各国の痛みの研究者とディスカッションをすることができた。プラセボ群の比較対象となっている鎮痛薬の種類や副作用の種類について考慮に入れた新たな研究を行っていきたいと考えている。
一方で生活習慣病と疫学の研究についても、食習慣と死亡率に関する研究や、生活習慣に対する食習慣と遺伝子多型の交互作用解析など新たな研究を開始しており、昨年度とはまた異なる疫学的手法を習得でき、本研究の発展に活かすことができると期待される。
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今後の研究の推進方策 |
本研究では、今までデンマーク・オーフス大学、スウェーデン・マルメ大学の共同研究者と、歯科領域におけるノセボ効果の存在の可能性を示した総説、および歯科領域のランダム化比較試験におけるノセボ反応を示したメタ分析を発表した。今後も歯科、プラセボ研究を専門とする共同研究者の助言を受けながら、実験研究も進めていく。
また、上述のように国際疼痛学会で得た知見から開始する新たなメタ分析や、所属する研究室が参加している疫学研究を引き続き行っていくことで、本研究が更に発展していくことを期待している。
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