先天異常の約1/3に、顔面頭蓋の奇形が存在することが知られている。顔面頭蓋の中でも、下顎は先天異常の現れやすい部位の一つである。つまり下顎形成メカニズムは、内外のわずかな変化にも影響を受けるような敏感なメカニズムで形成される器官となる。どのような変化が、下顎に奇形を引き起こすのかを理解するには、下顎がどの様に発生しているかを分子レベルで把握することが必須となるが、その多くは謎のままである。下顎は第一鰓弓を由来とし、メッケル軟骨が下顎に先立って形成される。メッケル軟骨自身は、下顎骨に変換することなく発生過程で消失するが、メッケル軟骨が欠如したマウスでは、下顎が著しい形成不全を引き起こすことが報告されており、下顎形成にメッケル軟骨が必須の器官であることを示唆している。そのため、下顎形成の詳細な把握には、このメッケル軟骨の形成メカニズムを知ることが必須となる。一次線毛は、ほとんど全ての細胞に存在する細胞小器官であるが、近年、シグナル伝達などの様々な機能を有していることが明らかとなってきた。一次線毛タンパクであるOfd1の欠損マウスに、メッケル軟骨の分岐が認められた。メッケル軟骨が形成する以前のステージで、メッケル軟骨形成予定領域の間葉組織にHhシグナルが活性化すること、Ofd1欠損マウスではそのHhシグナルが消失することを見出した。
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