研究実績の概要 |
これまでわれわれの研究グループでは、シェーグレン症候群モデルマウスにおける唾液腺に対して歯髄幹細胞の培養上清には骨髄由来間葉系幹細胞の培養上清より高い抗炎症作用や組織修復能があることを明らかにしてきた(Ogata K et al., Regen Ther. 2021, Matsumura-Kawashima M et al., Stem Cell Res. Ther. 2021)。その主な作用因子は上清中の細胞外小胞(エクソソーム)と考えられており、細胞間のコミュニケーションに重要な役割を果たしていることが分かってきた。そこで本研究では、幹細胞間でのエクソソームの違いを明らかにすることとシェーグレン症候群モデルマウスに投与することで、治療効果に違いがでるかどうかを確認した。まずは、歯髄幹細胞および骨髄由来間葉系幹細胞からエクソソームを超遠心法にて抽出し、ウエスタンブロット法(CD9およびCD81)および透過型電子顕微鏡(TEM)にてその存在を確認した。それら幹細胞から抽出したエクソソームをシェーグレン症候群モデルマウス(NOD マウス)に2回/週 4週間投与した。結果は、エクソソーム投与群において唾液量の増加および唾液腺のH&E染色で導管周囲の炎症性細胞浸潤の減少を認めた。 幹細胞由来エクソソームの抽出方法の検討に時間をかけたが、市販キット品より高濃度で抽出することに成功した。昨今のCOVID-19による緊急事態宣言下での大学への出入りが制限されていた関係もあり、エクソソーム内のマイクロRNAアレイは実行することができていない。また、動物実験も各群n = 3とやや少ない状況である。また、作用機序につながる分子メカニズムの解析も同様の理由により実行できていない状況である。
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