研究課題/領域番号 |
20K18674
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
吉村 卓也 鹿児島大学, 医歯学域鹿児島大学病院, 助教 (30726758)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 口腔がん / サルコペニア / myokine / adipokine / 予後 |
研究実績の概要 |
運動によって骨格筋から放出されるmyokineというサイトカインが口腔癌患者の予後に及ぼす影響を検討することを目的として研究を遂行している。まずは、口腔癌患者の予後に骨格筋の量や質が及ぼす影響を検討し、腰部筋肉の量、質と口腔癌患者の予後の関係について国際誌Cancersに投稿、掲載された。また、経過観察のために定期的に撮影する頭頸部CTを用いて同様の検討を行い、第3頚椎レベルの筋肉の量・質が口腔癌患者の予後と相関するという有意な結果も確認し、現在国際誌に投稿中である。 ヒト舌癌細胞株を用いて免疫不全マウスの舌に同所異種移植を行う実験にて、運動したマウス群と運動していないマウス群を比較したところ、運動しているマウス群の方が運動していないマウス群より癌の生着が悪く、生着しても増大が遅いだけでなく、生存期間が有意に長いという結果が得られた。定期的に採血や組織サンプルを回収し、現在、血中サイトカインの測定や組織学的評価、遺伝子学的評価を行っているところである。また、今後尾静脈から口腔癌細胞を注入する肺転移モデルや4NQOを用いた口腔癌の発癌モデルでも同様の実験を行い、運動の口腔癌発癌・転移への影響も検討していく予定である。 口腔癌細胞株を用いた実験では骨格筋および脂肪から分泌されるmyokine、adipokineのうち、前述の動物実験で変化が見られたものに注目し、口腔癌細胞に直接振りかけることで細胞増殖、遊走能、浸潤能などの癌の悪性度と関わる機能がどのように影響されるかを検討中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
筋計測および採血データ等を用いた実験では予後と関係する因子が抽出され、論文も投稿することができている。 マウスを用いた実験は、思っていた以上に時間がかかっているが、比較的良好な結果が得られており、細胞実験まで開始できている。 NGSを導入するのに苦労しており、その点がやや遅れているが、他の研究は概ね順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
筋肉を測定する研究に関しては現状のまま継続し、現在ピックアップしている筋肉以外や割面全体の筋肉や脂肪を測定する研究を追加する方針としている。 マウスを用いた研究では同所移植モデル、肺転移モデルにおいて免疫不全マウスを用いた研究を継続し、足の筋肉の解析から運動により増加や減少する因子を抽出し、そのサイトカインを用いて細胞実験で影響を検討する。 マウス実験に思った以上にお金がかかっており、NGSを用いた研究は金銭的に難しいので免疫組織化学を用いた研究に切り替える可能性がある。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度はコロナの影響で学会への参加等の費用がかからなかったことやマウスの実験に資金が必要で、そちらを優先するために並行して行う予定であったNGSを用いた研究を進めなかったことで資金的には余裕ができたように見えるが、実際はマウス実験でサンプル回収のみ行い、解析していないものがあるため、その解析資金とする。 次年度は免疫不全マウスを用いた実験と細胞実験をメインに解析を行うため、その資金にあてる計画である。
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