本研究は骨格筋から分泌されるmyokineの口腔癌への影響を検討するための一部として、口腔癌の制御に関係するmyokineを選出することを目的として研究を行なった。 臨床研究:口腔癌患者の予後に骨格筋の量や質が及ぼす影響を検討し、2020年に腰部筋肉の量・質と口腔癌患者の予後の関係、2021年に第3頚椎レベルの筋肉の量・質が口腔癌患者の予後との関係について国際誌Cancersに掲載された。また、上記2編の論文は単一筋肉に関しての報告であったが、断面全体の評価に関しても検討し、口腔外科学会、口腔腫瘍学会にてその成果を指導している大学院生が報告し、口腔外科学会では優秀ポスター賞を受賞した。 基礎実験:免疫不全マウスの舌に同所異種移植を行う実験では、運動したマウス群と運動していないマウス群を比較したところ、運動したマウス群の方が癌の生着が悪く、生着しても増大が遅いだけでなく、生存期間も長いという結果が得られた。採血や組織サンプルに関しては血中サイトカインの測定や組織学的評価から口腔癌の制御に関連すると思われるmyokineを選出し、口腔癌細胞株への添加実験で確認を行なった。数種類のmyokineが選出され、細胞増殖や細胞周期に関係するものや細胞遊走に関連するものなど複数のmyokineが関与していることがわかり、この成果に関しては口腔外科学会で発表した。 また、口腔腫瘍学会でのワークショップでの発表の依頼があり、臨床研究・基礎研究の内容を併せて報告を行なった。
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