研究課題/領域番号 |
20K18683
|
研究機関 | 鶴見大学 |
研究代表者 |
今村 武浩 鶴見大学, 歯学部, 非常勤講師 (40771754)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | 405青紫色レーザー光 / 光増感剤 / 口腔感染症制御法 |
研究実績の概要 |
超高齢社会を迎えたわが国においては、各種口腔感染症に対して、より効果的な予防法やより低侵襲な治療法の確立が急務である。 研究代表者は、405nm青紫色レーザー光が、数種の口腔感染症の原因菌に対して増殖抑制や殺菌効果があることを報告してきており、405nm青紫色レーザー光を用いることにより、従来の手法と比較して、より低侵襲で効果的な口腔感染制御を可能にすることが期待できる。本研究では、より副作用の少ない新たな光増感剤を併用した405nm青紫色レーザー光照射による口腔感染症原因菌の増殖抑制のメカニズムの解明を目指すとともに、口腔衛生環境の改善に役立つ殺菌・除菌法や効果的口腔感染予防に繋がる新たな物理化学的感染制御法の確立に向けた基盤研究を行っている。 2020年度は405nm青紫色レーザー光照射に適した光増感剤がCandida albicansの増殖に影響をおよぼすかどうかについて検討を行った。タートラジン、クチナシ色素、サフラン色素において、使用予定以上の高濃度においても増殖に影響をおよぼさなかった。このことは光増感剤は細胞障害性を有さないこと示しており、405nm青紫色レーザー光照射を用いた光線力学療法に適した光増感剤であることが期待される。 しかし近年、タートラジンなど自然界には存在しない合成色素は世界的、特に欧州においてその使用が疑問視されている。そこで、2022年度では新たな増感剤の可能性として、生体に為害性がなく、もともと体内に存在する物質であるALA(アミノレブリン酸)の増感剤に使用できる可能性について検討した。ある一定量のALAをRT-7(歯肉上皮細胞)添加し、その増殖を観察し為害作用を検討した。その結果1.0mMで細胞増殖に影響を及ぼさないことが確認された。このことは405nm青紫色レーザー光照射と増感剤としてのALAの適正濃度の決定に有意義な結果となった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
世界的な新型コロナウイルス感染症拡大の影響でプラスティック各種製品等の消耗品が入手困難であたったため、予定している検討が実施できていない。さらには、本研究には様々な細菌および真菌を使用するため、各種抗菌薬などの薬剤を多数使用する、しかし、昨今の薬剤入手困難な状況が続いており、継続的な細菌培養などが計画的に継続困難な状況が続いている。
|
今後の研究の推進方策 |
引き続き405nm青紫色レーザー光による抗菌メカニズムおよび増感剤を併用した光線力学療法のメカニズムの解明に関する検討を行っていく。検討としては、405nm青紫色レーザー光による細菌の増殖抑制効果が静菌作用によるものか殺菌作用によるものかを詳細に検討するため、細菌が増殖する際にミトコンドリア内で発現するNADHおよびNADPHについて分子生物学的解析を行うことや各対象菌種内に存在するプロトポルフィリンⅨやその類似物質をHPLCによって定量する等、継続的な細菌培養が必要とならない検討を優先していく。 また、2022年度の検討結果より、ALA(アミノレブリン酸)が増感剤として使用でき、また生体に為害性のない適切な濃度を決定出来たとこを踏まえ、405nm青紫色レーザー光と増感剤としてのALAの効果についても検討を進める。
|
次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症拡大予防のため世界的なサプライチェーンに不具合が生じていた影響で、プラスティック製品を始めとする消耗品の入手が困難であったため、購入費用が十分に発生していない。 今後検討を行う菌種を追加する予定のため細菌を購入し、培養のための培地や消耗品を購入する予定である。加えて、ミトコンドリア内で発現するNADHおよびNADPHについて分子生物学的解析にかかる各種試薬等の費用や各対象菌種内に存在するプロトポルフィリンⅨやその類似物質のHPLCによる定量を行うための費用が発生する。
|