研究課題/領域番号 |
20K18684
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研究機関 | 国立研究開発法人国立国際医療研究センター |
研究代表者 |
島田 泰如 国立研究開発法人国立国際医療研究センター, その他部局等, 歯科口腔外科医師 (50751757)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 造血器腫瘍 / 造血幹細胞移植 / 口腔 / 有害事象 / リスク因子 |
研究実績の概要 |
本研究は、国立国際医療研究センター病院 歯科・口腔外科を受診した造血器腫瘍患者(多発性骨髄腫、悪性リンパ腫、白血病、骨髄異形成症候群)を対象として、造血幹細胞移植 Hematopoietic Stem Cell Transplantation(以下、HSCT)を必要とする患者に生じた顎口腔領域に限局した有害事象および口腔内感染巣を起因として全身に波及した有害事象の発症状況を後方視的に調査し、これら有害事象のリスク因子を統計学的に解析するものである。これまで、研究全体の調査対象期間(2011年1月から2019年12月までの9年間)のうち、2016年12月までの6年間を対象として、患者背景(年齢、性別などの人口統計学的項目、処方薬や既往歴、合併症などの病歴)、身体所見(血液内科学的診断、口腔粘膜炎、急性歯周炎、抜歯後合併症、口腔衛生状態等の歯科口腔外科学的診断)、臨床検査項目(WBC、ANC、RBC、Hb、PLTなどの血液検査値、バイタルサイン)、放射線画像所見(CT、パノラマX線写真、口内法X線写真)、治療内容(齲蝕治療、歯周治療、抜歯術等の手術、口腔ケアの有無等の歯科口腔外科的治療、自家あるいは同種移植といったHSCTの種類をはじめ造血器腫瘍に対して行われた血液内科学的治療)に関する情報を診療記録より収集することができた。現在、残りの調査対象期間(2017年1月から2019年12月までの3年間)について情報収集を進めているが、得られた資料の中でも多発性骨髄腫患者における顎骨病変の発症状況やパノラマX線写真による放射線診断学的有用性を示すデータがこれまで報告されていない新たな見解と判断し、2021年6月に開催される第14回アジア口腔顎顔面外科学会総会にて発表を予定している。また、国際科学誌に投稿すべく、論文作成も進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
補助事業期間を通しての本研究の達成目標は、「造血幹細胞移植患者に生じた口腔関連有害事象の発症状況とそのリスク因子、そして口腔内感染巣の除去として抜歯術が行われた症例の予後について検討を行い、口腔関連有害事象の低減に向けた医学的根拠を確立させること」である。診療録を用いた後方視的観察研究として、予定通り、初年度は基礎的な情報収集を行ってきた。研究全体の調査対象期間は2011年1月から2019年12月までの9年間としているが、このうち2016年12月までの6年間を対象として情報を抽出することができた。
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今後の研究の推進方策 |
2年度目は口腔関連有害事象のリスク因子を統計学的に解析することが主となるが、まずは残りの調査対象期間(2017年1月から2019年12月までの3年間)についての情報収集を進める必要がある。なお、HSCTを施行する前に口腔内感染巣の除去として抜歯術が行われた症例に関しては、抜歯時の血液検査値や抜歯時期、抜歯の難易度を考慮した上でそのリスクまたは有効性を統計学的に解析し、非骨髄抑制患者(文献)との比較検討も行う。得られた情報を整理し、骨髄抑制あるいは免疫抑制を伴う患者に対する口腔内感染巣スクリーニングの重要性や口腔関連有害事象の低減に向け施行するべき対策案を医学的根拠とともにまとめ、国際科学誌へ投稿する。
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