研究実績の概要 |
癌の浸潤・転移は患者の生命予後を損なう要因であり、その制御機構を明らかにすることは急務である。口腔癌研究において、癌悪性化機構は解明されつつあるが、周囲口腔環境と癌悪性度の相関性やその誘導メカニズムは依然不明な点が多い。口腔微生物もその一つと考えられており、いくつかの作用メカニズムが示唆されている。口腔領域の慢性炎症である歯周病の細菌刺激や炎症性メディエーターによって、細胞増殖・突然変異誘発・癌遺伝子の活性化および血管新生を促進、誘導される。 近年、歯周病罹患は口腔癌および食道癌の発病リスクファクターとなることが示唆されており、歯周病原菌が原因の一つと考えられている。頭頸部癌の死亡率は、歯周病罹患患者、または歯周病原菌P. gingivalis(P.g)保有者では高い値を示しており、P.g抗原は口腔および上部消化管癌の特異的バイオマーカーと成り得る可能性が示唆されている。我々はこれまでにP.gが口腔扁平上皮癌細胞株の浸潤能を亢進することを報告してきたが、歯周病原菌や歯周病に伴う口腔環境の変化が口腔扁平上皮癌細胞株にもたらす影響のメカニズムを検討し明らかにすることが重要と考えた。 まず、P.gおよびP.gのgingipain欠損株であるKDP136(Kgp,rgpA,rgpB)による口腔扁平上皮癌細胞株であるSAS細胞に及ぼす影響を検討したところ、興味深い事にP.g感染細胞ではコントロールやKDP136(Kgp,rgpA,rgpB)よりも細胞が重層する傾向が多く認められた。今後これらの条件下で次世代シーケンサーを用いて検討を行なっていく。
|