口腔癌において、放射線治療は、腫瘍の根絶を目指す根治治療から、術前に腫瘍の縮小や不活化を図る術前治療、術後に腫瘍の再発を防ぐ術後療法、腫瘍の根治は望まないが症状の緩和やQOL改善を目的とする緩和的・姑息的治療とがある。特に口腔は治療による臓器温存が非常に重要な領域であり、口腔癌に対する放射線治療の汎用性は極めて高いのは言うまでもない。新しい放射線増感物質としての臨床応用やin vivoイメージングへの応用について各領域でナノ粒子研究が盛んに行われている。ナノ粒子の特性として表面修飾が容易で、現在臨床応用されている抗EGFR抗体や抗PD-1抗体などの分子標的薬を修飾することで、より腫瘍選択的に集積させることができる。また口腔癌は組織内照射などに代表されるように腫瘍部位へ直視下にてアプローチが可能で、直接腫瘍に局注したり、選択的動注することなども可能であるという利点を併せ持つ。 本研究では金ナノ粒子はAG1478やセツキシマブといったEGFR阻害薬に接着していることをラマン分光にて確認し、放射線増感としてだけでなく、EGFR阻害薬の抗腫瘍効果を増感することをin vitro、in vivoで示した。抗腫瘍効果はアポトーシスと細胞増殖能の低下に起因していた。 金ナノ粒子の局在はin vitroで透過電子顕微鏡で、in vivoでヌードマウスの腫瘍内においても走査電子顕微鏡で確認された。 金ナノ粒子の添加はin vivoにおいて肝臓・心臓・腎臓・肺でその変性が確認されず毒性は明らかになかった。金ナノ粒子の添加によりセツキシマブなどのEGFR阻害薬および放射線療法においても抗腫瘍効果が増すことが示された。上記の内容で国際口腔外科学会で発表を行い、BiomedReserach International及びCancersに掲載された。
|