骨粗鬆症治療薬に使用される骨吸収抑制剤の重大な副作用として顎骨壊死が挙げられるが、難治性かつ治療法が確立していない。副甲状腺ホルモン製剤の間歇的な全身投与が顎骨壊死に有効であることが報告されている。難治性疾患である顎骨壊死に薬物療法が奏効するようであれば、外科的治療と比較し非侵襲的であり、生活の質の維持、心理的負担の軽減も期待できるため、利便性、有益性に富んだ治療法となる可能性があり注目を集めている。しかし、現状では副甲状腺ホルモン製剤の使用を推奨するエビデンスは不十分であり、かつ、過去に申請者は副甲状腺ホルモン製剤の間歇的な全身投与により顎骨新生骨の微細構造の向上を認める一方、抗酸化ストレス物質の低下に伴い酸化・抗酸化バランスが崩れ、顎骨新生骨の骨質が劣化することを見出した。本研究の目的は難治性疾患である顎骨壊死に対して、薬物療法による治療を模索し多角的に検討することにある。本年度は、副甲状腺ホルモン製剤の投与方法に着目し、下顎枝に貫通孔を作成したラットに対して副甲状腺ホルモン製剤を貫通孔に直接投与し、その後採取した下顎骨を用いて新生骨の解析を行った。副甲状腺ホルモン製剤の局所投与後の新生骨に対してmicroCTを行った。副甲状腺ホルモン製剤の局所投与により、骨梁数、骨梁間隙に差を認めなかったが、骨量、骨梁幅の増加を認め、微細構造を向上させた。前年度までの研究において、副甲状腺ホルモン製剤の局所投与は血清中の酸化・抗酸化バランスに影響を与えなかったことから、副甲状腺ホルモン製剤の局所投与は、酸化・抗酸化バランスに影響を与えず、下顎新生骨の微細構造を向上させ創傷治癒促進効果が期待できることが明らかとなった。すなわち、副甲状腺ホルモン製剤を薬剤関連顎骨壊死の治療に適応する場合、局所投与は間歇的な全身投与と比較し、安全面においてより有利に適応できる可能性が示唆された。
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