研究課題/領域番号 |
20K18697
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
小野 信二 徳島大学, 病院, 医員 (60770576)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | MMP-9 / CXCL10 / ドライマウス |
研究実績の概要 |
ドライマウスの原因として唾液腺腺房構造の破壊が挙げられるが、その詳細な分子メカニズムは解明されていない。研究代表者は加齢ドライマウス患者およびシェーグレン症候群(SS)ドライマウス患者の唾液中に、蛋白分解酵素である Matrix metalloproteinase 9 (MMP-9) が有意に増加していることを発見した。本研究では、ドライマウス病態形成における MMP-9 過剰発現の分子機構を原疾患別に解明し、病因に対応したドライマウス治療の確立を目指すことを目的とする。 2020年度はヒト唾液腺細胞株を用いてMMP-9過剰発現に影響を与えるサイトカインを同定することにした。当科で樹立した正常ヒト唾液腺腺房細胞株(NS-SV-AC)および導管細胞株 (NS-SV-DC)に種々のサイトカイン(IFN-α,IFN-γ,TNF-α,IL-1β)を添加し、MMP-9 mRNA発現をRT-qPCRで解析した。無刺激の状態では、MMP-9 mRNA発現レベルは、NS-SV-AC細胞に比較してNS-SV-DC細胞で有意に高かった。NS-SV-DC細胞では、IFN-α,TNF-α,IL-1β刺激によりMMP-9 mRNAの発現亢進を認めた。 次に、MMP-9とCXCL10の関連を調べるために、MMP-9制御が導管細胞のIFN-γ誘導性CXCL10発現に及ぼす影響を調べた。先行実験で特定されたサイトカインでNS-SV-DC細胞刺激後に MMP-9 阻害薬 (Merk社) を添加し、CXCL10 の発現を RT-qPCR および ELISA で測定した。その結果、MMP-9阻害によりNS-SV-DC細胞におけるIFN-γ誘導性CXCL10の発現は、mRNAレベルでも分泌タンパクレベルでも有意に抑制されることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ヒト唾液腺細胞株を用いたin vitroの研究は、作業仮説とほぼ一致していた。先行研究で、SS患者の口唇腺DNAマイクロアレイ解析を行った結果、MMP-9の発現は健常者の口唇腺の約5.8倍の過剰発現を認めた。また、SS患者口唇腺の免疫組織化学染色解析では、MMP-9は導管上皮に強く発現することを明らかにした。 2020年度はSS口唇腺においてMMP-9が過剰発現をするメカニズムをin vitroで解析した。ヒト唾液腺導管細胞株(NS-SV-DC)では、IFN-α,TNF-α,IL-1βの刺激によりMMP-9 mRNAの発現亢進を認め、IFN-γではMMP-9 mRNA発現に変化を認めなかった。 次に、SS口唇腺において炎症性細胞浸潤に関与すると考えられるケモカインCXCL10とMMP-9の関連を調べた。研究代表者はすでにIFN-γがNS-SV-DC細胞においてCXCL10発現を誘導することを報告している。導管細胞からのCXCL10分泌にMMP-9が関与しているのではないかと考え、NS-SV-DC細胞にMMP-9阻害剤を加えることによりIFN-γ誘導性CXCL10の発現は、mRNAレベルでも分泌タンパクレベルでも有意に抑制されることが明らかになった。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度の研究で、導管細胞からのCXCL10分泌にMMP-9が関与していることが明らかになった。この現象に関しては、MMP-9が導管細胞からcleavageによりCXCL10を分泌させる可能性が考えられる。2021年度は、まずcleavageに関して銀染色により蛋白質を分離し質量分析 (mass spectrometry) を行い解析する。さらに、MMP-9 阻害薬がリンパ球の走化性に及ぼす影響をmigration assayにて検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
ドライマウス患者におけるMMP-9関連遺伝子群の同定のため、加齢ドライマウス患者口唇腺とSSドライマウス患者口唇腺を用いてDNAマイクロアレイを行う予定であったが、加齢ドライマウス患者の口唇腺採取の同意が得られにくく、検体数が不足のため解析が行えなかった。さらに、COVID-19の影響で学会が中止となったため、次年度使用額が生じた。 翌年度分として請求した研究費と合わせて、MMP-9発現を制御する遺伝子およびMMP-9により制御を受ける遺伝子を特定するためのDNAマイクロアレイ解析とGeneSpring GX (Agilent Technologies)とIngenuity Pathway Analysis (IPA)解析に使用する予定である。
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