研究実績の概要 |
ドライマウスの原因として唾液腺腺房構造の破壊が挙げられるが、その詳細な分子メカニズムは解明されていない。われわれは加齢ドライマウス患者およびSSドライマウス患者の唾液中に、蛋白分解酵素であるMatrix metalloproteinase 9 (MMP-9)が有意に増加していることを発見した。さらにSSドライマウス群では、Tumor necrosis factor-α (TNF-α)、Interleukin-1β (IL-1β)、ケモカインであるCXC motif chemokine ligand 10 (CXCL10)が有意に高値を示していた。本研究では、ドライマウス病態形成におけるMMP-9過剰発現の分子機構を原疾患別に解明し、病因に対応したドライマウス治療の確立を目指すことを目的とする。 唾液腺細胞株におけるMMP-9過剰発現メカニズムの解析 するために正常ヒト唾液腺腺房細胞株 (NS-SV-AC) および導管細胞株に種々のサイトカイン(IFN-α,IFN-γ,TNF-α,IL-6,IL-1β等) を添加し、MMP-9の発現量をRT-qPCRならびにELISA で解析した。無刺激の状態ではMMP-9発現レベルはNS-SV-AC細胞に比較してNS-SV-DC細胞で有意に高かった。NS-SV-DA細胞では、IFN-α,TNF-α, IL-1β刺激によりMMP-9の発現亢進を認めた。 MMP-9が唾液腺細胞からのCXCL10発現に与える影響を探索するために、上記実験で特定されたサイトカイン刺激後にMMP-9阻害薬 (Merk 社) を添加し、RT-qPCR、ELISAでMMP-9発現を解析した。その結果、MMP-9阻害によりNS-SV-DC細胞におけるIFN-γ誘導性CXCL10発現は、mRNAレベル、蛋白質レベルで有意に抑制されることが明らかになった。
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