研究課題/領域番号 |
20K18710
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研究機関 | 東京歯科大学 |
研究代表者 |
森田 奈那 東京歯科大学, 歯学部, 助教 (90733600)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 基底細胞母斑症候群 / iPS細胞 / Gorlin症候群 / Keratinocyte / UV / BCC / 歯原性角化嚢胞 / ゲノム解析 |
研究実績の概要 |
Hedgehog(Hh)経路の異常活性は多くの腫瘍で報告され、Hh経路は腫瘍形成に関わる重要な経路として知られている。その中の1つである基底細胞癌(BCC)の治療法は主として外科的切除である。特にHh受容体PTCH1の機能喪失変異で生じる基底細胞母斑症候群(BCNS)ではBCCの多発および高頻度な再発を生じる。Hh経路と発癌機序を詳しく解明しよりよい治療薬の開発ため、UV暴露により生じる腫瘍発生原因となるドライバー遺伝子の探索とアポトーシスの変化を解明することを目的とする。 2020度はBCNS患者より樹立したBCNS-iPSCsとヒトiPSCs(NiPS-B2株;RIKEN)を上皮細胞分化を実施した。BCNS-iPSCs分化細胞はHh経路のターゲット遺伝子はあるHh interaction protein の有意な増加を認め、Hh経路が活性化していることが判明した。BCNSiPSCs1株とNiPS-B2株の分化細胞にUV照射すると、BCNS-iPSCs分化細胞ではUV抵抗性を示した。さらに、UV照射にて生じたDNA損傷を免疫染色にて確認後、DNA修復経路における遺伝子発現を確認し、上記を論文報告した。 BCNSはBCCの他・歯原性角化嚢胞(OKC)や二分肋骨や大脳鎌の石灰化などの骨格異常などの多岐にわたる臨床的特徴を有する。責任遺伝子はPTCH1といわれているたが、その1つの遺伝子だけで本疾患の多岐にわたる臨床症状を引き起こすとは考えにくく、他の何らかの遺伝子が関与していることが考えられる。BCNSiPSCsを用いた腫瘍発生原因の検索と並行し、BCNS患者よりより提供を受けた検体よりゲノムDNAを抽出し、変異遺伝子を特定することで臨床症状との関連を検討することとした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2022年度も新規のBNCS患者の受診がなく、新規検体を入手することができなかった。 昨年度に引き続き、過去に提供をいただた検体のゲノム解析を行うのと並行し、検体提供に同意を得た非症候性OKCのゲノム解析を行い、比較検討を実施した。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は過去に同意の得られたBCNS患者の検体を使用し、ゲノムワイドでの疾患解明を実施した。しかし新規BCNS患者で同意を得られた患者がいなかったため、非症候性OKC症例での解析も実施した。 次年度以降は、初発OKC症例、再発OKC症例、BCNS患者のOCKと詳細に分けて再発に関連する部分でのゲノム解析に重点を置き、解析を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年度の新型コロナウイスルの流行に伴う物流の影響のため、安定した細胞維持が困難となる事態に至ったことで受け、2021年度は細胞培養は最小限として実施した。2021年度に当大学にて開発した、BCNSの診断遺伝子パネルを利用し、OKC の変異検出を試みたところ、開発したパネルは生殖細胞変異のみならず低頻度で生じる体細胞変異の検出が可能であり、OKC 病態における Hh 経路遺伝子変異の関与、解明に有用であることが確認できた。2022年度は検体数を増やしていく方針であったが、同意の取得できた非症候性OKCの症例数は数例であった。本年度も引き続き検体数を増やしていくと同時に投稿費として予算計上する。
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