歯根膜に局在する幹細胞が骨芽細胞に分化して、抜歯窩の治癒に寄与することが報告された。しかしながら、その歯根膜幹細胞画分の全容はいまだ明らかではない。本研究は歯根膜の幹細胞画分を同定することを目的とした。研究の過程で、レプチン受容体(LepR)陽性細胞が歯根膜の根尖部に局在することを見出した。遺伝子改変マウス(LepR-cre;Rosa26-flox-stop-flox-tdTomato)を用いて歯根膜のLepR陽性細胞の歯槽骨およびセメント質への寄与を調べた。その結果、若齢マウス(4週齢)におけるLepR陽性細胞の歯槽骨骨細胞への寄与はほとんど認められず、セメント細胞についてはすべてがTomato陽性であった。一方、LepR陽性細胞は加齢とともに骨細胞およびセメント細胞に分化した。しかしながら、その寄与率は20%以下であった。同様に、LepR陽性の歯根膜細胞は抜歯窩修復骨に寄与したが、その割合は10%以下であった。全歯根膜を回収し、幹細胞能をin vitroにて評価した。その結果、LepR陽性および陰性の両細胞画分に幹細胞能が認められた。以上より、歯根膜幹細胞は異なる歯根膜亜集団から構成されていることが示唆された。
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