研究実績の概要 |
OSCC患者168人のホルマリン固定パラフィン包埋組織サンプルと臨床病理学的データをレトロスペクティブに検討した。各症例の浸潤先進部よりtissue microarray法により検体を採取し、検討対象の各分子、すなわちCD44v3, CD24, PD-L1とPD-1のそれぞれについて免疫組織化学染色(Immunohistochemistry, 以下IHC)とreal-time qRT-PCR法を適用した。各免疫マーカーと臨床病理学的因子との関連については、統計学的に評価した。OSCCにおいて、CSCの免疫表現型であるCD44v3high/CD24lowの症例、および腫瘍実質と間質におけるPD-L1/PD-1陽性細胞密度が高い症例は、生存率が有意に低かった。さらに、CSCの免疫表現型(CD44v3high/CD24low)とPD-L1/PD-1の共発現が高い患者は、生存率がさらに低かった(P<0.01)。注目すべきは、CD44v3とPD-L1発現の間に正の相関(τ=0.1096、P=0.0366)があり、CD24とPD-1発現の間に負の相関(τ=-0.1387、P=0.0089)があったことである。さらに、IHCで判定したCD44v3高発現群では、CD44v3の負の制御因子であるU2 small nuclear RNA auxiliary factor 1(以下、U2AF1)のmRNAレベルでの発現が、CD44v3低発現群に比べて有意に低下しており(P<0.001)、U2AF1とPD-L1のmRNAレベルでの発現は有意な負の相関を示した(τ=-0.3948、P<0.001)。結論として、OSCCにおけるCSCsは、PD-L1/PD-1の共発現を介して、宿主の免疫機構を回避し、CSCの幹細胞性を維持することで、好ましくない臨床転帰をもたらすことが示唆された。
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