研究実績の概要 |
片頭痛は激烈な頭痛発作を繰り返す疾患で、患者のQOLが著しく損なわれることが問題となっている。片頭痛の発症メカニズムは未だ確立されていないが、髄膜に分布する三叉神経血管系および大脳皮質拡延性抑制(Corticla Spreading Depression, CSD)との関与が最も有力といわれている。片頭痛の予防薬として、様々な西洋薬の他に漢方薬の呉茱萸湯が有効であるといわれてきたが、漢方薬は経験的に使用され発展してきた治療薬であるため、基礎研究や臨床研究などの科学的裏付けとなる研究が不足している。そこで、本研究では、片頭痛の治療薬として経験的に使用されてきた漢方薬の呉茱萸湯に焦点をあて、片頭痛動物モデルであるCSDモデルに対する効果やその作用機序について検討し、明らかにすることを目的とした。 最終年度までに、呉茱萸湯のCSD発生に対する影響、痛覚伝導路の一次中継核である三叉神経脊髄路核尾側亜核および上部頚髄の活性化に対する影響、片頭痛関連行動であるimmpbilization(不動化)に対する影響について検討し、呉茱萸湯は片頭痛を抑制すること、そのメカニズムとしてCSDの発生自体への作用ではなく、CSDにより活性化される痛覚伝導路への作用が考えられた。そこで、次に下行性疼痛抑制系の中脳水道周囲灰白質(PAG)、青斑核(LC)、延髄吻側腹内側部(RVM)におけるc-Fos(神経細胞活動の指標)発現について検討した。その結果、呉茱萸湯によりLCにおけるc-Fos発現が有意に抑制されることが明らかとなった。 最終年度は痛覚伝導路の末梢側への影響について検討するために、三叉神経節におけるc-Fos発現について検討したが、2群に差は認められなかった。 以上より、呉茱萸湯は片頭痛発症を抑制することが明らかとなり、そのメカニズムとしてLCの活性化抑制が関与していることが示唆された。
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