口腔がんの増大は経口摂取を妨げる要因となっており、手術までに時間を要する患者では栄養不良の進行が問題となっている。“がん悪液質”は筋肉量減少を主体に体組成が変化する状態であり、食欲不振や臓器機能不全をもたらすが、関与するサイトカインなどが判明されつつも、その治療法はいまだ明らかになっていない。われわれは、癌細胞のエネルギー代謝の変化や低酸素環境に着目し、低酸素環境改善による新規治療法を報告してきた。また、治療抵抗性に関わる癌幹細胞関連因子に着目し、低酸素環境や分化度との関係を報告してきた。本研究の目的は、これらの新規治療法の標的を“がん悪液質”へ適応し、体組成の変化を改善することにより、宿主の衰弱を防ぐとともに癌細胞へのエネルギー供給を阻止する方法を確立することである。 実験動物用体組成計を購入し、in vitroの検討で、ヒト口腔扁平上皮癌細胞株(HSC-3)を移植したヌードマウスの体組成分析を行った。その結果、非治療群では治療群(局所的炭酸ガス投与群)と比較して、腫瘍移植4週間後の除脂肪量(率)の有意な減少が認められた。
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