近年、歯周組織の再生を目的としたbFGF製剤が販売されており、同製剤の基材を用いてBRONJ発症モデルラットに適応し研究を行った。実験群ではヒドロキシプロピルセルロース(HPC)+bFGFを、対照群ではHPCを抜歯窩に投与し比較した。その結果、X線学的、組織学的評価ともに実験群で有意なBRONJ発症の抑制が認められた。基材をHPCとしてもBRONJの予防に有用である可能性があると考えた。 またBRONJ発症モデルラットに人工骨(β-TCP)を填入し、その効果を検証した。抜歯後1週でβ-TCPと周囲肉芽組織を摘出しLC-MS/MS分析でゾレドロン酸(ZA)濃度を検証したところ、β-TCPからZAを検出し、また対照群と比較し肉芽組織中のZA濃度の減少を認めた。次に発症モデルにβ-TCPを填入する実験群と填入しない対照群に分け様々な評価法で比較を行った。その結果、実験群で有意なBRONJ発症の抑制が認めた。その分子メカニズムの解明のため、両群の肉芽組織からプロテオーム解析を行い関連タンパク質の検討を行った。すると非特異的な上皮/筋組織関連を除外したオートファジーに関連するAtg9a、ULK3を同定した。そこでオートファジーに関連するAtg9a、LC-3、Rubiconの他、創傷治癒のマーカーとなるCD68、α-SMAの免疫組織化学染色を行い、発現状況を比較した。Atg9a および LC-3 は上皮細胞では発現されず、上皮下領域の単核炎症細胞 (MIC) では実験群で有意な発現の増強が観察された。Rubiconは、上皮細胞において実験群で発現抑制を認めたが、MICでは両群に有意差はなかった。CD68、α-SMAではMICに発現があったものの両群で有意差はなかった。以上からBRONJの発症は抜歯窩局所のオートファジー機構が関与する可能性が示された。
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