本研究は、ヒトの断端神経腫に含まれる神経再生促進因子を添加した人工神経管の神経再生能の評価と開発を進めていくことであり、中空の内腔構造の改善がされた人工神経管の更なる神経再生の向上を目指すものである。まず、マウス坐骨神経損傷モデルの作成を行うため、環境整備と手術手技の獲得を行い、顕微鏡下での坐骨神経の切除と吻合を行った。手術手技としては、三種混合麻酔薬を腹腔内注射した雄のマウスを使用し、左側の坐骨神経を剖出し、露出した坐骨神経を4mm切断した。切断した両断端の坐骨神経を十分に剥離し、準備していた7mmの人工神経管を間に挿入し、顕微鏡下で10-0ナイロン糸を用いて神経吻合した。加えて、筋膜・皮膚を4-0絹糸で縫合し、マウスを覚醒させた。 作成した人工神経管を挿入したマウスを手術の7・14・28・42・56・84日後に足底部の疼痛閾値試験を用いて行動解析を行った。7・14・28・42・56・84日後にイソフルランで速やかに安楽死させた後、縫合した部位の坐骨神経を剖出し、縫合部位より末端の神経組織と施術側のヒラメ筋と腓腹筋を切除し、パラフィン標本とした。抗S100βと抗PGP9.5抗体を用いて神経組織を、抗SERCA1抗体を用いて筋組織を免疫組織学的に評価した。これらをコントロール群として、人工神経管に神経再生促進因子を添加し、同様の施術で比較評価していく予定である。使用する神経促進因子は、ヒトの舌神経損傷後に生じた断端神経腫内に多く認められた神経再生促進因子を用いて人工神経管を用いる予定であったが、実際に神経再生促進因子を添加した人工神経管を作成することが困難であった。
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