研究課題
若手研究
口腔粘膜が癌化する過程では、異型上皮の出現に伴って間質にも形質・構造の変化が生じる。本研究では、異型上皮と間質細胞間の相互作用(上皮-間質クロストーク)の実態を明らかにする目的で、初期の粘膜表在性病変を対象として上皮異型形質と間質要素の関連性を検証した。舌表在性病変の組織解析により、異型上皮における癌抑制遺伝子p53分子の発現様式が異なること、また、健常上皮から異型上皮へ移行する領域において粘膜在住の抗原提示細胞の分布局在が変化することを明らかにできた。
口腔病理学
口腔癌の罹患者数は、特に高齢化が加速する本邦においては増加傾向にあり、早期転移での死亡率が高い現状からも早期発見につながる診断指標の検索が急務である。本研究の成果は、癌抑制遺伝子p53発現を病変領域全体の発現様式から捉えることにより癌形質を区別しうること、また、初期の表在性病変において周囲の間質環境に微小変化をきたしていることを示した。これらの知見は、早期病変の診断指標となるとともに、治療戦略を講じるうえで重要と考えている。