研究課題/領域番号 |
20K18747
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
千葉 雄太 九州大学, 歯学研究院, 助教 (10821986)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | Gタンパク質共役型受容体 / 歯の発生 / エナメル芽細胞 / 細胞外環境 |
研究実績の概要 |
歯胚の発生においては、組織特異的な遺伝子群が発生段階に応じて制御されることによって歯の形成が進んでいく。我々は歯胚に高発現である分子のスクリーニングから、今までに機能やリガンドが明らかとなっていない、いわゆるオーファン受容体であるGタンパク質共役型受容体Gpr115に着目した。本研究では、Gpr115の歯胚発生における詳細な機能解明、及びGpr115のリガンドを同定することを目的とする。令和3年度では、当初予定していた研究計画を更に発展させ、関連論文を含め筆頭著者として4件の論文発表、4件の学会発表を行った。 令和2年度の研究成果より、Gpr115はエナメル質形成過程の酸性環境下において、Car6を介してpHを調整することによってエナメル質石灰化を促進していることが明らかとなった。この経緯より令和3年度では、細胞外環境のpH変化によって歯原性上皮細胞にどのような変化がもたらされるのかを明らかとすることを目標とした。具体的には、異なるpHに調整した培地にて培養した歯原性上皮細胞株の遺伝子発現変化のスクリーニングを行い、Gpr115の転写制御機構の探索を行なった。その結果、Gpr115は酸性環境下において遺伝子発現が上昇することが明らかとなった。 これらの知見は歯の発生に関わる新規の分子機序として歯胚発生機構の理解を深めるとともに、細胞外環境がGpr115の発現に与える影響を明らかとし、Gタンパク質共役型受容体の分子機構解明に寄与する結果となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
令和3年度では、Gpr115の転写制御機構を解明するための第一歩としてプロモーターベクターを作成し、評価系を樹立することができた。また、酸性環境下での歯原性上皮細胞における遺伝子発現変化をスクリーニングすることができた。このことから当初の計画通りの進捗が得られていると評価した。また、Gpr115の発現するエナメル芽細胞の分化機構や、エナメル質石灰化に関わる遺伝子の同定と機能解析に関しても知見が得られたため、当初の計画以上に進展したと判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今後の推進方策として、令和4年度ではGpr115に結合するタンパク質のスクリーニングを行い、結合分子の中からリガンド候補分子を同定する。実験に必要となるGpr115発現ベクターおよび抗体は既に機能することを確認しており、実行可能性は十分である。また、pH変化により遺伝子発現変化が見られた分子の中から、Gpr115に関連した機能を有する遺伝子を探索する。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナウィルス感染症拡大に伴い、オンライン開催の学会が多く旅費が不要となったため、次年度繰越額が生じた。 次年度では学会が現地開催される場合旅費として使用し、旅費が不要の場合実験に用いる消耗品に使用する予定である。
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