歯列、発音、口腔清掃は、小帯の形態に大きな影響を受ける。小帯が高位であったり、短い場合には強直症となり、発音障害や歯列不正など様々な問題を引き起こす。強直症治療後に、発音障害、歯列不正が残存した場合、その処置には長い時間を要することがある。将来、強直症になる小帯を予測し、早期に対処することが望ましいが、小帯形成メカニズムは全く明らかとなっていない。一方、Oral facial digital typeI (OFD1) 症候群をはじめとする複数の遺伝性疾患の患者には強直症が認められることは、小帯の異常が偶然に生じるものではなく、特定のメカニズムに沿って引き起こることを示している。本研究課題は、小帯発生メカニズムの解析から、強直症の発症機構を明らかにすることを目的としている。Ofd1の部位特異的欠損マウスであるOFD1;Osr2Creマウスに小帯の欠損を認めた。過去にLgr5欠損マウスとTbx22欠損マウスで小帯の欠損が報告されている。小帯形成直前の胎生11日の下顎突起におけるLgr5とTbx22の発現が、Osr2Cre発現領域とオーバーラップすることを見出し、その部位が小帯形成領域である可能性が示された。OFD1;Osr2Creマウスの表現型から、小帯がanterior-posterior axisではなく、lingual-buccal axisで形成する可能性が高いことが明らかとなった。
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