本申請課題ではTMJ-OAの発症を阻止し、傷ついた軟骨を修復する新しい治療法を生み出すための基盤を築くことを目指している。そのために軟骨細胞でOA様変化をもたらす局所的糖代謝不全が、関節軟骨の成熟に深く関与するCCN3を強く発現誘導することに着目し、どのような分子がそれを媒介しているかを明らかにすることを目的とした。 令和3年度までの時点で、転写因子RFX1が、実際に解糖系阻害によるCCN3誘導に関与していることまでが実証できていることから、令和4年度はRFX1タンパク質が解糖阻害で増加するか、エンハンサーへの結合性が変化するか、強制発現で何が起こるかなどを評価し、さらにRFX1機能を阻害、および増強する小分子の探索に移る予定であった。しかし、昨年度から今年度に渡る研究実施者の妊娠・出産に伴い、実験研究は止むなく一時中断せざるを得なくなった。しかしながら出産・育児に追われつつも、全力を傾けて現状でできることを進めた。具体的には、RFX1のエンハンサーへの結合が変化するかを評価するための実験の準備、およびこれまでに収集したRNAサンプルの解析を研究協力者に依頼した。これに加えて上記RNAサンプルを、CCNファミリー関連研究にも役立てるべく提供した。さらにRFX1を誘導する小分子を実験的に探索する代わりに、オンラインデータベース検索を行い、実際に候補としてthymidineを見出すことができた。以上の成果の一部は、研究協力者によって学会にて発表されている。
|