研究課題/領域番号 |
20K18764
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
吉見 知子 長崎大学, 病院(歯学系), 医員 (20805973)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | マウス / ボツリヌストキシン / 成長発達期 |
研究実績の概要 |
軟食化ならびに社会の高齢化が急速に進むなか、「噛めない」「うまく飲み込めない」児童や、摂食(咀嚼・嚥下)機能障害を持つ高齢者が急増している。食物をよく噛まずに丸呑みする食事パターンが老年期にまで継続すると、摂食・嚥下障害を有する高齢者が益々増加し、将来極めて大きな社会問題になることが予測され、オーラルフレイルの予防および早期治療への対策が検討されている。顎口腔領域における機能低下・不全は、顎顔面形態のパターン形成に大きな影響を及ぼすといわれているが、成長期における機能発達や形態成長の過程を、継続的に定量評価することは極めて困難であった。本研究の目的は、顎口腔機能低下マウスおよび不正咬合マウスを用いて、成長発達期における咀嚼・嚥下機能と顎顔面形態パターンの相互制御機構を解明することである。 本年度は、咀嚼筋機能低下マウスモデルを作成し、形態データの経時的収集を行った。マウスの離乳期である生後3週齢にBoNT/Aを咀嚼筋(右側咬筋)に注入し、神経伝達を遮断し、機能低下を惹起した咀嚼筋機能低下モデルマウスを作製した。その後、動物実験用3DマイクロCTを用いて、成長発達の過程における骨形態、骨密度に関して3週齢から成長完了期である15週齢まで2週おきに計測を行った。さらに、筋電図計測装置、光学式6自由度顎運動計測システムを用いて、咀嚼・嚥下時顎運動・筋活動の記録を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
3週齢の雄性ICRマウスを2群に分け、BTX0.5U/5μlを右側咬筋に注入したマウスを実験群(咀嚼筋機能低下モデルマウス)、生理食塩水を5μl右側咬筋に注入したマウスをコントロール群とした。両群のマウスの体重測定とマイクロCT撮影を2週ごとに行い、9週齢時のマイクロCT再構築画像を用いて骨形態計測を行った。 実験群のBTX注入側とコントロール群の比較では、実験群で下顎頭高径、下顎頭幅径、下顎体長径の減少が認められた。実験群のBTX非注入側とコントロール群の比較では、下顎頭幅径が減少した。実験群のBTX注入側と非注入側の比較では、注入側で下顎頭幅の減少、下顎角と下顎下縁平面角の増加が認められた。 咀嚼筋機能低下モデルマウスの骨形態計測および解析が長期に及んだため、当初予定していた、下顎骨偏位を引き起こした不正咬合モデルマウスの作製および解析がやや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
3週齢のマウスの下顎切歯に、下顎を偏位させる目的で咬合誘導装置を装着し、下顎骨偏位を引き起こした不正咬合モデルマウスを作製し、動物実験用3DマイクロCTを用いて、成長発達の過程における骨形態、骨密度、骨質、咬合を3週齢から成長完了期である15週齢まで2週おきに計測する。BoNT/A注入モデルマウスと機能と形態を比較することで、顎顔面形態の成長と咬合に影響を及ぼすこと、ならびに機能と形態が双方向で制御し合う、相互関連性が存在することを検証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
運動計測機器を作成・改良するための電子部品、機械部品などの消耗品の使用が当初の予定より少額ですんだこと、また、咀嚼筋機能低下モデルマウスの作成および解析が長期間に及んだため、当初予定していた不正咬合モデルマウスの作成および解析を実施できず、実験動物の購入を見送ったこと、さらに、COVID-19の影響により参加を予定していた学会などが相次いで中止及びWEB開催となったことによる出張の見送りなどにより、次年度使用額が生じることとなった。 次年度においても引き続きCOVID-19の影響が見込まれるため、旅費の使用予定は最低限とし、本年度実施予定であった、下顎骨偏位を引き起こした不正咬合モデルマウスの作成および解析の実施に必要な実験動物の購入や飼育経費を重点的に執行する。また、英語論文の投稿料なども必要となる予定である。
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