研究実績の概要 |
歯の欠損に対して有効な治療法の一つに「自家歯牙移植法」がある。しかしながら、実際の歯科臨床においては移植後の骨性癒着、歯根吸収および移植歯の喪失などによる多くの失敗例が報告されている。これは再構築される歯周組織の不調和によると考えられる。本研究では生体の歯周組織を模倣する複合体、すなわち調和の取れた歯周組織オルガノイドの作製実現に向けて研究を進めている。現在まで予備実験を進めている3次元培養法を応用して歯周組織オルガノイドを作製している。しかしながら、実際の単なる歯周組織複合体ではなく、調和の取れる歯周組織複合体を再現できるオルガノイドが必要である。歯周組織の中でもセメント質分化誘導促進については未だ不明である点が多い。そのため、オルガノイドの一部となるセメント芽細胞分化の促進を図るため歯根膜幹細胞を用いて研究を進めた。歯根膜幹細胞を用いてスフェロイド形成、もしくは細胞シートを作製した。その後にコラーゲンゲル内で培養を行い3次元培養を図った。プラスミノゲンアクチベーターインヒビター(PAI-1)を添加し3次元培養で分化能が向上した細胞にセメント芽細胞分化の誘導を図った。実験を繰り返し、歯根膜幹細胞のセメント芽細胞分化促進が図られることを認めた。結果をまとめて、Int. J. Mol. Sci. 23(4), 2022に論文を掲載、TERMIS-EU 2023(組織工学・再生医療国際学会欧州支部会議学会)で発表を行った。また、セメント質分化誘導の確立のため、セメント芽細胞分化促進能があると報告されているCEMP-1を用いた分化促進法を検討した。歯根膜幹細胞にCEMP-1遺伝子導入を図り、導入後の細胞を細胞シートに形成する研究を進めた。
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