研究課題/領域番号 |
20K18772
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
早川 貴子 北海道大学, 歯学研究院, 専門研究員 (80782937)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 歯学 / 破骨細胞 |
研究実績の概要 |
歯科矯正治療において歯を移動させる際、歯根膜内や顎骨表面に存在する線維芽細胞、骨芽細胞、破骨細胞などの歯根膜細胞群および神経細胞などは圧縮力や牽引力などの機械的刺激を受ける。歯根膜細胞群と機械的刺激との関連について、多くの研究報告があるが、破骨細胞に対して圧縮力を直接作用させた報告は我々の研究のみである。 本研究では可撤式矯正装置の使用を想定し、持続的な圧縮力を間欠的に与えた場合の破骨細胞分化誘導を制御するメカノトランスダクション機構を解明することを目的としている。 令和4年度の結果より、継代数が10未満であるN10RAW細胞と継代数が30以上であるN30RAW細胞に対して破骨細胞誘導培地を用いて7日間培養し、破骨細胞関連遺伝子の発現を検討したところ、破骨細胞のマーカー遺伝子であり、破骨細胞のマーカー酵素である酒石酸抵抗性酸性ホスファターゼ(TRAP)はN30破骨細胞で有意に減少していた。receptor activator of nuclear factor κB(RANK)は3、6時間でN30破骨細胞が有意に減少していた。破骨細胞の細胞融合に関連しているCD47、dendritic cell-specific transmembrane protein(DC-STAMP)およびosteoclast stimulatory transmembrane protein(OC-STAMP)ではN30破骨細胞で有意に発現量が減少しており、N30破骨細胞では破骨細胞の融合が抑制されていることが示唆された。さらに、IntegrinαⅤ、IntegrinβⅢは破骨細胞が細胞外基質である骨に接着するために必要であり、N30破骨細胞でIntegrinαⅤの発現量が有意に減少していた。 以上の結果から、一つの研究室内で、同様の実験を行う場合においても、RAW細胞の継代数によっては実験結果に差が生じる可能性を認めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
令和5年度は当初の計画からの遅れは取り戻すことはできなかったが、順調に計画を進めている。当初の計画を行うため、補助事業期間再延長の承認申請を行った。
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今後の研究の推進方策 |
令和6年度では、N10RAW細胞とN30RAW細胞の間で、NFATc1、CD11a、CD11bなど、まだ確認していない破骨細胞関連遺伝子の発現を検討し、RAW細胞の継代数の変化による破骨細胞の特性の差はどのようなことに由来するのかを検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究計画は遅れているが、順調に計画を進めている。一部の破骨細胞関連遺伝子の発現の比較検討を行っていないため、未使用額648,077円が発生した。未使用額に関しては、当初の研究計画の遅れを取り戻すため、令和6年度の破骨細胞関連遺伝子の発現の比較検討等に関する消耗品の購入に使用する。
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