常染色体優性遺伝性疾患Axenfeld-Rieger症候群(ARS)は、緑内障や無虹彩など眼の異常を主症状とし、その他に歯の先天欠如や矮小歯・タウロドント歯などの歯の形態異常が認められる。ARSの原因遺伝子としてFoxc1が知られている。そのため、Foxc1の遺伝子異常が、ARSにおける歯の発生異常を誘導すると推察されるが、歯の発生におけるFoxc1の発現、機能、および分子制御は不明である。代表者の予備実験から、歯胚の間葉細胞において高いFoxc1の発現が示された。代表者は、過去にFoxc1がヘッジホッグのシグナル伝達分子Gli2と物理的に結合し、PTHrPの発現を促すことにより、内軟骨性骨化を制御することを見出した。加えて、マウス初代軟骨細胞において、Foxc1によるPTHrP発現制御にエピジェネティクスが関与することを明らかにした。さらに、Gli2の異常により矮小歯や癒合歯を呈し、歯の発生過程における形態および位置異常が認められることが知られている。これらの知見から代表者は、歯性間葉細胞で発現するFoxc1がGli2と相互関係を持ち、正常な歯の発生に寄与すると仮説を立てた。本年度は、昨年度に引き続きマウス歯胚の歯性細胞におけるFoxc1の機能解析を行った。歯性間葉細胞におけるFoxc1とGli2の協調作用を検討するために、Myc標識したGli2とFlag標識したFoxc1を歯性間葉細胞に遺伝子導入し、免疫共沈降実験を行った結果、Foxc1はGli2と物理的に結合することが明らかとなった。以上により、Foxc1は歯の発生過程において主に歯性間葉細胞に発現し、Gli2との相互関係により、歯胚間葉の増殖および分化に関与し歯の発生を促すことが推測される。
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