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2020 年度 実施状況報告書

ピロリ菌感染メカニズムにおける齲蝕の関与についての検討

研究課題

研究課題/領域番号 20K18778
研究機関大阪大学

研究代表者

鋸屋 侑布子  大阪大学, 歯学研究科, 助教 (40803078)

研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2022-03-31
キーワードヘリコバクター・ピロリ菌 / ラット齲蝕モデル
研究実績の概要

本研究は、「齲蝕の存在がヘリコバクター・ピロリ菌の感染成立にいかに関与するのかを検討」することを目的として行っている。ピロリ菌は乳幼児期に口腔を介して感染すると考えられており、これまでの研究から小児口腔内の感染根管内にある一定期間局在する可能性を示した。さらに、齲蝕誘発ラットにピロリ菌を経口感染させてピロリ菌感染ラット齲蝕モデルの構築に成功し、齲蝕の存在はピロリ菌が口腔へ定着するための重要なリスク因子となることを示した。
本研究ではさらに、齲蝕の原因菌であるミュータンスレンサ球菌により形成されるバイオフィルムとピロリ菌の口腔への定着との関係を検討した。1%スクロース含有液体培地にて調整したミュータンスレンサ球菌およびピロリ菌液200μlをチャンバースライドに加え、微好気環境下にて37℃で18時間培養した。培養後、形成されたバイオフィルムを3%パラホルムアルデヒドにより固定し、それぞれの菌に対して蛍光免疫染色を行った後に共焦点レーザー顕微鏡を用いて観察した。その結果、ピロリ菌の単独培養では単相で希薄なバイオフィルムの形成しか認められなかったのに対し、ミュータンスレンサ球菌とピロリ菌を共培養したものではピロリ菌はバイオフィルム内に多量に分布することが示された。さらに、ミュータンスレンサ球菌とピロリ菌を共培養したチャンバースライド内におけるピロリ菌が占める菌量の割合は、ミュータンスレンサ球菌およびピロリ菌をそれぞれ単独培養した場合と比較して有意に高い割合を示した。これらの結果から、歯面上にミュータンスレンサ球菌を含むバイオフィルムが形成されることはピロリ菌定着のリスク因子になることが示唆された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

齲蝕原性細菌であるミュータンスレンサ球菌およびピロリ菌を用いたバイオフィルムアッセイにより、歯面上に形成されるミュータンスレンサ球菌を含むバイオフィルムは、ピロリ菌定着のリスク因子となる可能性を示すことができた。
しかし、当初予定していたラット齲蝕モデルを用いた検討が、新型コロナウィルスの蔓延による緊急事態宣言の発令や様々な活動制限の影響により、計画的なラットの購入および飼育が困難であったことから行うことができなかった。そのため、想定をしていた進捗状況よりやや遅れをとっている状況にある。

今後の研究の推進方策

動物モデルを用いて齲蝕がピロリ菌の感染を成立させるメカニズムの検討を行う予定である。
具体的には、ミュータンスレンサ球菌を異なる週齢のラットに感染させることで重症度の異なる齲蝕を誘発した後にピロリ菌を感染させる。一定期間飼育した後に屠殺し、口腔サンプルおよび胃サンプルを分析することで、齲蝕の重症度の違いによる口腔および胃へのピロリ菌の定着、胃の傷害程度に違いが生じるかを検討する。また、同程度の齲蝕を誘発させた異なる週齢のラットにピロリ菌を感染させる群も作製し、同様の分析を行うことでピロリ菌の定着しやすい時期についても検討したいと考えている。

次年度使用額が生じた理由

(理由)
新型コロナウィルス蔓延の影響により予定をしていた動物実験を今年度は行えなかった。また、各学会もオンライン開催となり、旅費の使用がなかったことによる。
(使用計画)
当初予定をしていた動物実験を遂行し、その成果の発表を行う。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2020

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (1件) (うち国際学会 1件)

  • [雑誌論文] Distribution of Helicobacter pylori and Periodontopathic Bacterial Species in the Oral Cavity2020

    • 著者名/発表者名
      Kadota Tamami、Hamada Masakazu、Nomura Ryota、Ogaya Yuko、Okawa Rena、Uzawa Narikazu、Nakano Kazuhiko
    • 雑誌名

      Biomedicines

      巻: 8 ページ: 161~161

    • DOI

      10.3390/biomedicines8060161

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Contribution of Streptococcus mutans to Helicobacter pylori colonisation in oral cavity and gastric tissue2020

    • 著者名/発表者名
      Nomura Ryota、Kadota Tamami、Ogaya Yuko、Matayoshi Saaya、Iwashita Naoki、Okawa Rena、Nakano Kazuhiko
    • 雑誌名

      Scientific Reports

      巻: 10 ページ: 12540

    • DOI

      10.1038/s41598-020-69368-2

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] Effects of Helicobacter pylori infection in caries-induced rats.2020

    • 著者名/発表者名
      Kadota T, Ogaya Y, Nomura R, Nakano K
    • 学会等名
      The 68th Conference of Japanese Association of Dental Research
    • 国際学会

URL: 

公開日: 2021-12-27  

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