研究実績の概要 |
初年度では in vitro実験系にて、ANGPTL2の添加が軟骨細胞に及ぼす影響について検討を行ったが、ヒト軟骨細胞の培養に難航し、結果を得ることができなかったため、引き続き滑膜細胞にて検討を行った。ANGPTL2の添加によるJAKシグナル伝達経路への影響を検討するため、JAKファミリーのリン酸化についてwestern blot解析を行ったところ、全てのJAKsのリン酸化の亢進が認められた。また、LILRB2中和抗体を添加し、検討を行ったところ、LILRB2中和抗体添加により、JAK1、JAK2およびTyk2のリン酸化の抑制が認められたが、JAK3のリン酸化の変化は認められなかった。また、Integrinα5β1中和抗体では、JAK1の発現の抑制が認められた。
in vivo実験においては、13週齢Wister系顎関節症モデルラットを用いてANGPTL2および細胞外基質分解酵素タンパクの下顎頭軟骨における発現を確認するため、免疫染色を行った。下顎頭への咬合挙上装置による過度な圧迫によって、下顎頭軟骨でのANGPTL2の発現および受容体の発現は有意に亢進することは検証できたものの、ANGPTL2阻害剤の軟骨保護効果についての検証では有意な結果を得ることができなかった。
今回の実験結果により、滑膜細胞において、ANGPTL2はLILRB2を介して受容され、MAPK, NF-κB, Akt, JAK1, JAK2およびTyk2のリン酸化によって、炎症性関連因子の遺伝子発現を亢進し、炎症を引き起こしていることが確認された。
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