研究課題/領域番号 |
20K18785
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
木舩 崇 九州大学, 大学病院, 医員 (90830414)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 自閉症スペクトラム障害 / メラトニン / ドーパミン作動性ニューロン / ミトコンドリア / メラトニン受容体 |
研究実績の概要 |
本研究では、自閉症(ASD)の病態に関連したドーパミン作動性ニューロン(DN)の分化と発達の障害に対し、メラトニンがどのような作用を及ぼすのか、その機序を明らかにすることを目的とする。材料は、ASDの病態モデルとしてASD児由来乳歯幹細胞(SHED)から分化誘導したDNを用いる。コントロールは、健常児由来DNを用いる。 研究の初年度には、DNの分化と発達に対する細胞外のメラトニン作用を調べた。培養系に添加したメラトニンが、ASD児由来DNの神経突起の発達促進、活性酸素種の低減、ミトコンドリア機能の改善に効果を示すことを明らかにした。2021年度は、これらのメラトニン作用機序をさらに解析した。メラトニンの作用機序には、メラトニン受容体を介した経路と受容体非依存的経路の2つの可能性がある。前者では、培養液に添加したメラトニンは受容体との結合を介して下流の細胞内シグナル伝達分子を活性化し、様々な作用を発現する。後者では、培養液に添加したメラトニンは、DNの細胞膜を通過して細胞内に浸透し、直接的に作用する。本研究では、ASD児由来DNに対するメラトニンの作用機序を調べるために、メラトニン受容体の阻害剤であるルジンドールを用いた。ASD児由来DNの神経突起発達とミトコンドリア膜電位を改善するメラトニン効果は、培養液に添加したルジンドールによってほぼ完全に抑制された。これは、これらのメラトニンの効果が主に受容体を介した経路である可能性を示している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2020年度は、ASDの病態に関連し得るDNの分化と発達の障害に対し、メラトニンの薬物学的有効性を示す細胞生物学的証拠を得ることができた。これをもとに、2021年度以降はその分子機序の解明のため、メラトニン受容体を介したシグナル伝達経路の解明へと進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
現在、他のメラトニン効果に対するルジンドールの阻害効果を調べている。また、メラトニン受容体特異的アゴニストであるラメルテオンが、メラトニンと同様の効果を示すかどうかも検証中である。さらに、メラトニン受容体の下流で活性化されるシグナル伝達分子も検索中である。これらの細胞外由来メラトニンの作用に加えて、自閉症児由来DNのメラトニン自己産生能の欠陥の可能性についても解析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
メラトニンによる活性酸素低減をルジンドールが阻害するか調べるための試薬類、ラメルテオンがASD児由来DNに与える影響を調査するための試薬類、メラトニン受容体の下流で活性化されるシグナル伝達分子を検索するため、ASD児由来DNのメラトニン自己産生能について調査するための試薬類に充てる予定。
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