研究課題
本研究では、自閉症(ASD)の病態に関連したドーパミン作動性ニューロン(DN)の分化と発達の障害に対し、メラトニンがどのような作用を及ぼすのか、その機序を明らかにすることを目的とする。材料は、ASDの病態モデルとしてASD児由来乳歯幹細胞(SHED)から分化誘導したDNを用いる。コントロールは、健常児由来DNを用いる。初年度では、DNの分化と発達に対する細胞外のメラトニン作用を調べた。培養系に添加したメラトニンが、ASD児由来DNの神経突起の発達促進、活性酸素種の低減、ミトコンドリア機能の改善に効果を示すことを明らかにした。2021年度では、これらのメラトニン作用機序をさらに解析した。メラトニンの作用機序には、メラトニン受容体を介した経路と受容体非依存的経路の2つの可能性がある。本研究では、ASD児由来DNに対するメラトニンの作用機序を調べるために、メラトニン受容体の阻害剤であるルジンドールを用いた。ASD児由来DNの神経突起発達とミトコンドリア膜電位を改善するメラトニン効果は、培養液に添加したルジンドールによってほぼ完全に抑制された。したがって、ASD児由来DNに対するメラトニンの効果は、主に受容体を介した経路であると考えられた。2022年度では、ASD児由来DNのミトコンドリアに対するメラトニンの効果を中心に解析した。ミトコンドリア機能は、神経の分化と発達に不可欠である。ASD児由来DNでは、ミトコンドリアカルシウムレベルの低下と関連して、酸化的リン酸化機能の低下が観察され、これはメラトニン受容体を介する経路で改善した。さらに、このシグナル経路には、ERからミトコンドリアへのカルシウム移動促進が関与する可能性が示唆された。現在、これらの研究成果を国際的学術論文誌に投稿するために準備している。
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