リアルタイムで得られるEMGの周波数と、31P-MRSによるリン酸化合物代謝、ならびに筋断面を正確に描出可能なmfMRIで得られるT2時間を相互に比較することで、咀嚼筋の活動、疲労および疲労からの回復の動態を検証する。また、局所筋疲労の特徴をとらえるEMGを相互に補完する多角的筋疲労診断法の確立を目指している。乳酸,筋pH,血中酸素飽和度などの生化学的な方法,血管もしくは筋繊維における水分子の移動をとらえる生理学的な方法を統合する。本研究では、比較的断面積の小さい咀嚼筋(咬筋・側頭筋・顎二腹筋)においても、局所筋疲労の特徴をとらえる多角的筋疲労診断新たな画像診断手法が妥当であるかを検証し、顎変形症患者の咀嚼筋疲労を非侵襲的に定量評価する診断方法の確立を目指す。筋電図(EMG)により周波数解析を行うことで筋疲労を視覚的に評価することができる。さらに筋機能MRI(mfMRI)を用いることで,形態的な情報とT2値から得られる機能的な情報を,同時に複数の筋から取得可能であり,核磁気共鳴分光法(31P-MRS)により高エネルギーリン酸化合物を評価することで,疲労関連物質(PCr,Pi)にフォーカスされた咀嚼筋のエネルギー代謝を詳細に評価することが可能となる。 EMG・mfMRI・31P-MRSから得られる生理・生化学的情報は,顎変形症患者のQOLに直接的な影響を与えると考えられ,顎顔面領域における咀嚼筋疲労の発症機序の解明および診断法の確立が期待されるため、今後採得できたデータを解析、統計処理を行っていく。
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