咬筋の筋活動が弱く機能的な不調和があることや、最大咬合力が弱いなどの報告がある下顎前突患者19名と健常者19名の咬筋に対して、実験的咬みしめ前後の一過性の筋疲労をmfMRIと31P-MRSを用いた分子イメージングを使用した新しい画像診断法としての有効性を評価した。その結果、下顎前突患者群の平均T2値は、安静時の健常者群の平均T2値よりも有意に延長し(p<0.05)、平均T2値は、実験的咬みしめの間に両方のグループで一時的に延長することが示された。この研究に加え、骨格筋活動評価のゴールドスタンダードである筋電図法による測定結果との関連については,四肢の筋で相関が認められるとの報告があるのに対して、咀嚼筋については十分な検証されていないため、咀嚼筋疲労に関して、 T2強調画像におけるT2緩和時間(T2値)と筋電図(EMG)における周波数積分値(IEMG)に着目し研究を進めた。下顎前突と診断された16名(男性7人、女性9人、29.4歳±9.1歳、前顔面高比 : 1.32±0.04)および公募健常者17名(男性9人、女性8人、26.9歳±2.8歳)を対象として、30% 最大咬みしめ(MVC)を5分間持続するという検査プロトコールを採用し、表面筋電図の積分筋電図で得られる咬筋・側頭筋の活動性ならびに疲労の定量的評価結果と 筋機能MRIから得られる横緩和時間(T2値)との関連を明確化し、顎変形症患者における咀嚼筋の易疲労性を検証した。結果としてはEMGにおけるIEMG、mfMRIにおけるT2時間、これら2つのパラメータによる咀嚼筋疲労診断は有効的であると考えられるが、基準の確立のためには、さらなる資料の収集・検討が必要であると結論づけた。
|