乳歯が萌出する前から口腔粘膜に定着しているミティスレンサ球菌は、齲蝕原性がなく健常者においてはほとんど毒性がない。しかし、これらの菌群は生体にとって有害である活性酸素種のひとつである過酸化水素を産生することで知られており、その生理学的意義は未だに明らかになっていない。 口腔内に初期定着する細菌は、他に乳酸菌として知られている乳酸桿菌や乳酸球菌があげられるが、これらの菌もミティスレンサ球菌と同様に過酸化水素産生性細菌である。過酸化水素産生性細菌がなぜ、他の菌に先駆けて口腔粘膜に定着できるかは明らかになっていないが、我々は口腔内での初期定着に過酸化水素産生能が有利に働いているえているのではないかという仮説を立てている。 本研究では齲蝕に罹患している乳幼児と齲蝕に罹患していない乳幼児の唾液を採取し、ミティスレンサ球菌を中心とした過酸化水素産生性細菌に焦点を当て、過酸化水素が口腔内細菌叢に何らかの役割を果たし、最終的には齲蝕に罹患しにくい口腔内細菌叢を形成することを明らかにしたいと考えている。
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