研究課題/領域番号 |
20K18793
|
研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
清水 真美 日本大学, 松戸歯学部, 助教 (50732856)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | daidzein / 壮年患者 / 骨代謝 / 卵巣摘出rat / BMP |
研究実績の概要 |
近年, 矯正治療を希望する年齢層が高まってきている。加齢により様々な代謝に変化が生じる。矯正治療において歯の移動時の圧迫側と牽引側に骨のリモデリングが生じるため, 骨代謝の変化は深く関与する。Daidzeinは骨粗鬆症に用いられ, 骨吸収抑制と骨形成を促進する物質である。本研究の目的は, daidzeinが壮年患者の歯の移動の骨代謝にどのような影響を及ぼすか解明することである。 研究方法としては, 壮年患者に相当するaging ratの歯の移動モデルにdaidzeinを投与し, 骨形成因子(ALP, OCN, BMP-2)と骨吸収因子(RANKL, OPG)の発現を組織学的に検討する。In vitroでは、骨芽細胞に矯正的な圧迫・牽引力を加えdaidzeinを投与し, in vivo と同様の遺伝子動態を分子生物学的に検討する。 昨年度はaging ratを用いた研究はかなりの年数がかかるため現実的ではないと判断し, daidzeinが女性ホルモンと深く関与する物質であることから閉経後の女性の歯槽骨代謝に影響を与えるのではないかと考え, 雌性ratに卵巣摘出術を行い歯の移動を行いdaidzeinの効果について検討を行うこととした。現在予備実験を行っている。In vitroにおいても壮年患者の細胞培養が困難であることから, まずdaidzeinの骨代謝への影響を検討するため骨芽細胞に矯正力を負荷し遺伝子動態を調査することとした。 本研究でdaidzeinの矯正的な歯の移動における骨代謝への影響を解明できれば, 今後増加する壮年矯正患者の骨代謝の均衡を保ちながら歯の移動を行え, 患者負担の少ない安全で効率的な矯正治療を行う一助となると考える。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
In vivoにて, 60週齢のaging ratの購入および期間的な問題等があり使用が困難であったことから, 実験計画の立て直しが必要となった。ゆえに, エストロゲンが欠乏し歯槽骨吸収のリスクが一番顕著に現れる閉経後の女性にターゲットを絞り閉経期の女性(壮年女性)に値する卵巣摘出ラットを使用することに変更し, 倫理委員会などを通し直していたため動物実験の実行が遅延した。また新型コロナの影響により打合せが困難となり研究の開始がより遅れた。 In vitroでは, 上記とあわせ壮年期の女性矯正患者の歯根膜細胞を培養し実験を行うことに変更したが, 壮年期患者の抜歯が少なく, 細胞を集めるのにまず時間がかかるのと同時に細胞の育ちが悪く培養がうまくいかず難航している状態である。そのため研究計画を見直し、骨芽細胞へdaidzeinを添加し圧迫および牽引力を負荷しその影響についてまず検討することに変更した。現在、骨芽細胞培養中である。
|
今後の研究の推進方策 |
In vivoでは, 卵巣摘出ラットの矯正学的な歯の移動前・中・後にdaidzeinを腹腔内注射しマイクロコンピューター断層撮影を行い歯槽骨の吸収量の測定, 骨の形態計測及び骨密度の測定を行う。歯根周囲の牽引側では, 骨形成因子であるALP, OCN, BMP-2を圧迫側では, 骨吸収因子のRANKL, OPGとTRAPの発現を組織学的に検討する。この際、まず卵巣摘出を行わない(偽手術を行ったもの)同一週齢のラットを対照群として歯の移動時の骨吸収の程度や歯の移動距離等について卵巣摘出群と比較検討する。その後,daidzeinの効果について上記の検討を行っていく。 In vitroでは骨芽細胞に, 圧迫力と牽引力を加え, daidzein処理を行い, ALP, OCN, BMP2, OPG, RANKLの遺伝子発現及びタンパク産生量について検討する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
In vivoにて, 60週齢のaging ratの使用が困難であったことから, 実験計画の立て直しが必要となり, エストロゲンが欠乏し歯槽骨吸収のリスクが一番顕著に現れる閉経後の女性にターゲットを絞り閉経期の女性(壮年女性)に値する卵巣摘出ラットを使用することに変更し, 動物実験委員会で審査を通し直した。新型コロナウイルスの影響で実験計画立案に時間がかかり, 現在予備実験を行っている際中であり, 動物実験の実行が遅延している。さらにIn vitroでも, 上記とあわせ壮年期の女性矯正患者に対象を限定して歯根膜細胞を培養し実験を行うことに変更したが,壮年期患者の抜歯が少なく, 細胞を集めるのに時間がかかってしまっているため、骨芽細胞にdaidzeinを添加した状態で矯正力を負荷し, 骨芽細胞への影響について調査することとなった。上の理由により実験自体の開始が遅れていることから次年度にメインの実験を行うこととなったため, 次年度分の実験動物及び実験に用いる試薬の購入に充てる。
|